そうですか。
どうもお話を伺ってどうもありがとうございました。
あっ。
今ちょっと聞いたんですけども…。
あっ失礼しました。
私案内人の渡辺えりです。
えっとこの住宅街に続く一本道なんですけども…。
今は人影もまばらですよね。
それがある時期になると町の小さな球場にプロ野球チームのキャンプがやって来てこの道がとってもにぎやかになるそうなんです。
選手やファンが行き交いたくさんの出会いに心躍らせる町の人たち。
今年はどんな思い出が生まれるんでしょう。
(自転車のベル)
(自転車のベル)おはようございま〜す。
(選手)おはようございま〜す。
(女性)亜蓮君亜蓮君!広島から来たんよ!
(女性)チョコチョコチョコチョコ!ありがとうございます。
わあ!
(テーマ音楽)
(友達)行け!俺の自転車使え!俺の自転車使えお前!
(昴星)無理やチャリチャリチャリ!
(友達)待ってもらえ待ってもらえ!
(友達)待って〜!日向灘に面する宮崎県日南市油津地区。
5,000人余りが暮らす港町です。
2月。
この町にプロ野球のキャンプがやって来ます。
(「それ行けカープ」)優勝からは20年以上遠のいていますが2年連続セリーグ上位入賞を果たし今乗りに乗っています。
(手拍子)人だかりの先には球界を代表するエースの…そして去年セリーグの新人王に選ばれた…昨シーズンは1年目にもかかわらず年間10勝を挙げました。
(子供)大瀬良選手サイン下さい!大瀬良選手…。
やった〜!キャンプ中お目当ての選手に一目会おうと町の人口の10倍5万人のファンが訪れます。
町の人たちはカープつまり「鯉」ののぼりをあげて歓迎します。
・
(少年)光がやべえ。
光がやべえ。
(取材者)マジ?はい。
(笑い声)それ言っちゃいかんよ。
キャンプが始まったのは53年前。
町は当時マグロやカツオそれに天然のブリなども水揚げされ好景気に沸いていました。
町の人たちは総出でカープを熱烈に歓迎してきました。
ブリブリ元気出して戦ってもらいたい!そういう意味においてブリを2匹!ブリブリ!
(笑い声)しかしこの20年余り水産物の輸入増加などで町の漁業は衰退。
活気があった商店街も空き店舗が目立つようになりました。
町の様子はすっかり変わってしまいましたがキャンプの時だけにぎわいが戻る場所があります。
それがこの球場から商店街へと続く300mの一本道です。
宿舎と球場の間を行き来する選手の通り道になっています。
ファンにとってはサインをもらえる絶好の場所です。
(取材者)めっちゃあるね。
(笑い声)
(女性)亜蓮君亜蓮君!広島から来たんよ!
(女性)チョコチョコチョコチョコ!ありがとうございます。
わあ!
(取材者)おはようございます。
こちらの男性3人組。
わざわざ広島から仕事を休んで来たそうです。
(取材者)今日はどちらから?尾道です。
(取材者)広島から。
職場の後輩。
地元の後輩で…。
(取材者)へえ〜そうですか。
あの…。
大瀬良さんだ。
あっ大瀬良…。
大瀬良さ〜ん。
(男性)ここに書いて下さい。
新人王の大瀬良投手です。
もう最高。
ありがとうございます。
・
(男性)はいチーズ。
(シャッター音)選手とファンが行き交う一本道。
今年も特別なひとつきが始まりました。
・
(男性)すいません。
ありがとうございました。
地元の人たちにとっても待ちわびたキャンプ。
この一本道でこいのぼりを準備する夫婦に出会いました。
また間違えた。
やり替えじゃ。
キャンプが始まる前からここで暮らしてきた橋正俊さんと伊勢子さんです。
(取材者)へえ〜。
してやらんとなぁ。
こいのぼりを飾るようになったのは13年前。
きっかけは当時監督だった山本浩二さんとの交流でした。
(伊勢子)あっこで2人で写ってんの。
私の病気上がりや。
ハハハハ!この写真の5か月前に勤めていた工場で大けがをした伊勢子さん。
大きな手術をし会社も退職。
ふさぎ込む日々でした。
そんな時家の前を通りかかった山本監督が気さくに声をかけてくれたのです。
えいちゃん。
あんたとここいのぼりはいつ?明日?当時美容室を開いていたお隣さんもその時からこいのぼりを飾っています。
山本さんから応援しだしたよなぁ。
そうですよ。
山本監督…。
ここ店してたから。
ここパーマ屋だったんですよ。
だからいつも監督さんがいらっしゃると…。
(伊勢子)9時40分もう決まって。
戸をトントンたたいて「あら朝早くからお客さんやね」とか「今日は忙しいね」とか。
でよくチーズケーキとかもみじ饅頭お土産によく頂きました。
監督から。
それ以来こいのぼりを飾り道を行き交う選手を応援する事が毎年の楽しみになりました。
真ん中真ん中。
(伊勢子)自転車じゃ。
お疲れさ〜ん。
お疲れさまでした〜!キレイデス。
最近伊勢子さん夫婦は前にも増して年に一度のキャンプを心待ちにするようになりました。
夫婦には6人の孫がいます。
幼い頃から親代わりに世話を焼いてきましたが今では会えるのは正月ぐらいになりました。
(伊勢子)ず〜っともう…遊びに。
親が働いてたからよ。
私が日曜日の時はねみんな行きよったから。
なかなか会えなくなった孫たちの姿をカープの選手たちに重ねて見ているのです。
(伊勢子)記念に…。
(正俊)やっぱ選手たちもそうやろうな。
やっぱ褒めて…軒下のこいのぼりには選手たちの成長への願いが込められていました。
おはようございます。
おはようございます。
キャンプ中盤。
いつものように球場へ向かう選手たちに声をかけていた伊勢子さん。
この日はちょっと違う出会いがありました。
おはようございます。
おはようございます。
立ち止まってくれたのは選手たちのトレーナー。
伊勢子さん飾っているこいのぼりについて話し始めました。
ありがとうございます。
(伊勢子)頑張ってもらわないかんしね。
そしたらおかあさん…。
名刺くれんの?いやあれです。
おかあさんお風呂好きですか?はい。
温泉好きです。
私にくれる?あら…。
たくさんもらっちゃったんで。
あららありがとうございます。
はい。
サインもらっとこうか。
あっ僕は裏方なんで。
裏方でもいいわ。
ちょっと待って…。
裏方でも…ねえ!名前覚えとかないかんから。
色紙!色紙に書いちょって下さい。
1年に1回やから。
僕サインとかないんで普通に名前…。
名前書いちょって下さい。
「広島カープ」…。
「広島カープ」って書いて…。
(伊勢子)はい。
ありがとうございます。
使わせてもらいます。
是非使って下さい。
ありがとうございます。
こっちこそ頑張ってもらわんと。
頑張って下さい。
ありがとうございます。
よかった…よかったよ。
僅か3分間のやり取り。
特別なひとときになりました。
よかった…。
・よかった!アハハ!うれしいね。
おばあちゃんでもこんなのがもらえるっていう事よね。
若い人と違うからよ。
声かけてくれるがねおばあちゃんでもこんなして。
(打球音)
(見物客)お〜!
(拍手)あっこれじゃ。
ここありました。
(店主)2月19日ですね。
平成6年の。
キャンプを励みにしているのは町の大人たちだけではありません。
ナイスプレー!プロの選手に憧れて中学から野球を始めた1年生の谷昴星君です。
でも小学校から野球を続けているメンバーに囲まれなかなか試合に出場できていません。
4月から新入生が加わり競争が激しくなる中でこれから活躍していく自信を持てずにいました。
週末。
一本道の突き当たりにある商店街に昴星くんの姿がありました。
宿舎に戻る選手からサインをもらおうとしているのです。
背番号を頼りに選手の名前を調べ始めます。
(男性)さあ誰でしょう?
(子供)66だったよ。
(男性)66番だって。
(昴星)木村昇吾さん!いつもテレビで見ている憧れの選手からサインをもらって自分の励みにしようと思っていました。
(友達)来たよ来た!1人。
また1人選手が帰ってきました。
・
(昴星)なんかサインしてるよ!なんかサインしてる。
あれもしかしてこの選手…。
(子供)サインしてるよ!あ大瀬良!何番?言って。
すぐに見つける。
大瀬良かも。
大瀬良かも。
新人王の大瀬良投手。
(大瀬良)こんにちは。
こんにちは〜。
なのに昴星くんすぐに一歩が踏み出せません。
あっ!
(友達)行け!俺の自転車使え!俺の自転車使えお前!
(昴星)無理や!チャリチャリチャリ!
(友達)待ってもらえ待ってもらえ!かなり出遅れてしまいました。
それでも憧れの選手から勇気をもらいたい。
チャリンコにはチャリンコで対抗する!
(友達)待って〜!必死に後を追いかけます。
・
(友達)待って〜!見失っても諦めません。
(昴星)いた!いました!やっと追いつきました。
(昴星)すみません。
お願いします。
ありがとうございます。
(大瀬良)はい。
ありがとう。
(昴星)頑張って下さい。
ありがとう。
じゃあね〜。
さようなら!はあ〜。
はあ…あぶねっ!やったぁ!最後まで諦めず自分を励ます一枚をもらえました。
(練習の掛け声)・
(選手)それでは一本締めで締めます。
2月28日。
・
(選手)よ〜お!
(一本締め)
(一同)お疲れっした!
(拍手)ひとつきのキャンプが終わりました。
伊勢子さん夫婦は朝から家の前で誰かを待っていました。
ポケットには…。
(伊勢子)みんなを見送ってやらんといかんから。
頑張ってもらわなんから。
(伊勢子)なんか着るもんが違うよ。
あの日入浴剤をくれたトレーナーの津幡さんです。
おはようございます。
今日はね…わあ〜すみません。
ありがとうございます。
今朝8時から待ってて。
ず〜っと。
そうだったんですか。
こっちも見えたから今日は。
ねえ頑張ってもらわんと。
はい。
また見えるでしょ?
(津幡)そうですね。
また寄って下さい。
思って来るかもわからんし。
大瀬良投手のサインをもらった谷昴星くんです。
あれから家での自主練が増えました。
憧れの選手。
自分はピッチャーじゃないけどまあ…ああいう憧れられる人になりたい。
いい一枚になった。
その一枚が…サイン一枚が。
いい一枚になったと思います。
カープが去った3月初め。
一本道の軒先で伊勢子さん夫婦はこいのぼりを片づけていました。
ちゃんとしちょかんと。
次飾る時の図面。
(取材者)えっ何ですか?こんなして今度は次ばしようかなって話。
もう来年の飾りつけを計画していました。
楽しくいくと。
空を泳ぐ季節外れのこいのぼり。
何気ない一本道がこれからもずっと特別な思い出を紡いでいきます。
2015/04/05(日) 16:30〜16:55
NHK総合1・神戸
にっぽん紀行「鯉(こい)と思い出の一本道〜宮崎 日南市油津〜」[字][再]
広島東洋カープの春季キャンプ地、宮崎県日南市。2月、選手や全国から押し寄せるファンで、街はひと時のにぎわいを見せる。地元の人々の記憶に刻まれる、ひと月を追う。
詳細情報
番組内容
街の商店街から球場に続く、一本の小さな道。普段は人通りもほとんどないが、キャンプ期間中は選手たちが徒歩や自転車で行き交い、サインをおねだりする“カープ女子”や親子連れなどで一気に華やぐ。この、年に一度のにぎわいを心待ちにしているのが、道沿いに暮らす地元のおばあちゃんや、有名選手に憧れる子どもたちだ。時折、心地よい日差しに包まれる2月。キャンプが日南の人々に運んでくる、「小さな幸せ」を見つめる。
出演者
【出演】渡辺えり
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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