日本の話芸 落語「坊主の遊び」 2015.04.05


(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(笑い声)
(拍手)
(三遊亭圓歌)もうね長い事やってるからね上がってきてもなかなか座れねえんだよ。
最も一番長かったのが死んだ彦六ってえんだ。
あそこからここまで7分かかった。
大体舞台が10分ぐらい。
また7分やって終わっちゃう。
帰る…。
もう自分じゃ気が付かなかったけどね。
もうしょうがないよ。
70年やってんだよ。
いっぺんこっち来てやってごらんなさい。
面白くも何ともねえから。
舞台装置は何にもないしな。
横に戒名がぶら下がってるだけ。
正月に来た客だよ「だんか」って読みやがったよ。
どうやったら「だんか」って読めんだ?中には偉そうな顔して「待ってました歌奴!」なんて。
俺はもう圓歌になって50年だよ。
この間もっとすげえ客に会ったね。
「山のあなやれ〜」なんて言うの。
忘れちゃったよばかばかしい。
山のあなで売り出したのは昭和25年だよ。
その時生まれた人が既に後期高齢者でしょ?そう穴ばかり掘っちゃいらんないよ。
だからね昔っからやってる落語もねだんだん分かんなくなっちゃった。
一番分かんないのは日本の言葉がだんだん分かんなくなってきた。
我々の時には「いいねトンボが北へ行ったよ」。
これだけで分かったんですよ。
「北向きはどこが目当てか赤トンボ」。
つまり今の人は全然気が付かない。
吉原の事を北国といったんです。
なぜ北国っていうんですかっていっぺん聞いた事があんの。
そしたらあちらの地区は東北の方が多いんですってね。
…で東北なまりっていうのがあるんでそれを全部直すために吉原言葉というのがはやったって。
やっぱり聞いてみねえと分かんねえもんだね。
我々の仲間でも昔は飲む打つ買うなんて。
もういざとなるとこの3つできねえやつは駄目だったの。
今そんな事やるやついないよ。
みんな大学出てやってんだから。
大学出てやる仕事か?こんな事は。
大学出た人はみんな客席にいるんだよ。
だから大学行かねえやつが向こうから出てくんの。
ちょうど調和がとれるんだよね。
今はみんな大学が向こうから出てくんの。
そっちが…まあこっちの話だから。
だから我々の言葉でも随分変わってきましたよ。
「あの人はお女郎買いが好きだね」。
お女郎買いってえのは大体お女郎を買いに行くんですからあんまり何か買いに行く訳じゃない。
坊主というのはご隠居さんがさんざんお仕事をなすって家督を息子さんに譲ります。
あと俺はもう用がないだろうというんで頭を丸めて坊さんになる。
だから吉原でも何でもそう行けたもんじゃないんですよ。
昔は品川だけはよかったんですよ。
あそこにお寺の大きいのがありますからね。
名前は言えませんけど。
あのお寺の坊さんだけは行ってもいいんです。
坊さんが行くのと医者が行くのと隠居が行く。
これが3つが坊主なんです。
三坊主といったそうですね。
ですから昔はってえと「あ〜あの人は医者だよ。
坊さんだよ。
隠居だよ」ってよく分からない。
「医者は医者でも薬箱持たぬ。
薬ご用なら袂にござる」って変な歌がはやったもんだ。
その時分のお笑いでございます。
まあお年をお召しになってご自分がお遊びを覚えるってえとなかなかそうはやめるもんじゃない。
あるご隠居さん。
若手に誘われてたまたま吉原でお遊びになった。
ところが吉原で遊んでるうちはいいんですが一人で行くってえと何となく気が差す。
お供を連れて歩きます。
床屋の大将ってえの。
これがやたら旦那に気に入られてんの。
ところがこの人がお酒飲むってえと人間がガラッと変わるんです。
この方が床屋の大将ってえのは人間がいいんですがお酒一滴入るってえとガラッと変わっちゃうの。
その度に旦那に小言言われて「二度とお前なんかうちに来んな!」。
こう言われてみると男ってえのは面白いもんで呼ばれねえと自分で行く気にもならない。
「今日も今日とてまぬけだね。
こういう時に遊びに来りゃいいじゃねえか。
俺だって今日どっかへ出かけねえな。
隠居になってからこういう日を待ってんだよ。
せがれ夫婦は出かけてる。
だから今晩遊びに行ったって誰にも文句言われねえんだよ。
番頭さん床屋がしばらく来ねえようだな。
何?さっきも来て前を通った?ばかだねあいつは。
黙って入ってくりゃいい。
おお来たよ。
どうしたい?」。
「すいません。
この間もお酒に酔っ払いまして大変ご無礼を申し上げたそうで」。
「いやご無礼じゃねえんだよ。
お前の酒はね人間的な飲み方なんだよ。
少〜し飲むってえと人の悪口言うだろ?人間っていうのはね酒飲んで人の悪口言ってるうちは人間が収まってねえんだよ。
お前はそれなんだよ」。
「今朝からうちのかみさんとけんかしてまして『あんないい旦那をしくじった日にゃこの町内にいられない。
お前さん一回でいいから謝りに行っておくれよ。
お前さんが謝りに行かないようなら私は荷物をまとめて実家へ帰る』。
さっきから実家へ帰る支度してた…。
『じゃ俺が謝ってくるからちょっと待ってろ』って待たせてあるんです。
申し訳ございません。
お酒も飲みませんしこれからあんまり大きな事も申し上げません。
一つお許しのほど」。
「いいおかみさんだね。
亭主の事をそんなに心配して実家へ戻るとまで言ったのかい?ハハハッ。
うんいいんだよ。
別に怒ってる訳じゃないんだから。
お前ただ酒飲むと人間が変わっちゃうんだよ。
今日だってこれから遊びに行こうなと思ってるとこ。
『誰かいねえかな?お前が来たら連れていこう』。
待ってるとこへお前がちょうど来たんだよ。
出かけるかい?」。
「へい」。
「出かけるかい?」。
「どちらへでござんす?」。
「どちらへじゃないよ。
これから焼き場行こうってんじゃないんだよ。
2人そろって行くんだ。
吉原の雑踏だよ」。
「吉原の雑踏結構ですな」。
「行けんのかい?」。
「ええ実はですね今人様のひげを剃ってる最中だった。
慌てて持ってきちゃった」。
「カミソリなんか持ってくんなよばかだね。
お殿様で言えばな刀を持ってきたのと一緒だよ。
お前が持ってると遊んでても面白くねえだろ?俺が預かってやるからこっちよこしな」。
「ええ。
でも行くんなら行くってひと言うちへ断りませんとかみさんの…」。
「あのねかみさんなんかどうでもいいんだよ。
お前がうちに帰るだろ?何となくうちへ帰ったなと思うと出かけんのが嫌になんだよ。
人間なんてえのはそんなもんだよ。
行くんならこのまんま行け」。
「じゃ恐れ入ります。
お預かり願いたい」。
「おう。
おい番頭さん。
番頭さん!」。
「へい」。
「出かけるよ」。
「どちらへでござんす?」。
「うん…ちょっとそこまでだ」。
「ちょっとそこまでってどの辺です?」。
「いいじゃねえか。
せがれが帰ってきたらちょいとそこまで行ったって言いなよ」。
「ちょいとどこまでです?」。
「うるさいよお前は何べんも。
ちょいと用だって言いな」。
「何でおわすか?ご子息がお帰りになりまして『大旦那どうした?』。
『ただいま吉原へお出かけになった』」。
「知ってやがるこの野郎。
そういう事言うもんじゃないんだよ。
これはね少ないけどせがれに隠れて後で飲みに行っておくれ」。
「さようでございますか。
どうも恐れ入ります」。
「それからな言っておくけどせがれには吉原に行ったって言わないでね」。
「へい。
若旦那お帰りになりましたら『大旦那どうした?』。
『大阪へお出かけになりました』」。
「それじゃいつまでも帰ってこられねえ。
ばか野郎。
行ってくるよ。
早く出しなよ。
げそ用意しておくれ。
はいありがとうありがとう。
よいしょどっこいしょっと。
来い。
行くんだよ」。
「へい。
旦那も嫌いじゃないね。
『年は取っても浮気はやまぬ』なんてね。
『やまぬはずだよ先がねえ』って」。
「なんて歌歌ってんだこの野郎。
見ろ。
お前がくだらねえ事言ってっから向こうから孫が帰ってきちゃったよ。
これから吉原行こうってのに孫が帰ってくるようじゃさい先がよくねえやこりゃ。
あいよどこ行ってた?薪屋のじいちゃんとこかい?よかったなあ。
うん。
おじいちゃんちょっと買い物に行ってくるからな。
『何買うんだ』って?言えねえもん買ってくんだけど。
『坊にも持ってきておくれ』って。
あら取り外しがきかねえからね。
大人になったらまたゆっくりつきあってもらおう。
じゃあいいよ。
気を付けて帰んな…。
あ…危ない…危…おっと!車ちょっとどいてくれ。
お〜ありがとうありがとう。
気を付け…」。
「いやいややっぱり若旦那の息子だから孫だよね。
かわいいもんだね。
『どこ行くんだ?』『ちょっと買い物に行ってくるよ』『私にも買ってきておくれ』って。
またああいう時の言葉がうまいね。
やっぱり年の功だよ」。
「うるさいねお前はいつまでも。
あ〜あ〜。
蔵前からここまで来るってえと気が晴れ晴れとすんな」。
「さようでござんすな」。
「ゆうべの女さぞ俺の事を何か考えてんだろうな。
振り返った途端に柳の木がある。
見返り柳ってんで。
江戸町京屋揚屋。
ここへ来るってえとうきうきすんな」。
「さようでござんすな」。
「え〜ちょいとちょいとちょいとちょいと。
そこ行くお一人の方ちょっとちょっと寄って下さいよ。
もうあんた3回回ってんだよここ。
何回回ったって同じだよ。
変わるもんじゃねえんだから。
だまされたと思って…いや本当に。
あの…看板見てよ看板。
新しい看板でしょ。
新店なんだよ。
ちょっと寄ってってくれよ」。
「嫌だよ」。
「『嫌だよ』じゃねえ。
ちょっといいから寄んな…」。
「うるせえなこの野郎。
それでこの間お前にだまされたんだよ。
『新しい店へ来た女だ。
新しい店へ来た女だ』って。
上がったら『印旛沼に7年いた』ってんだよ。
嫌だよそんな鰻みてえな女」。
「もう一回りしたらいらっしゃいよ」。
「どうだ?な。
遊びというのはこういう声を聞かなきゃ遊びにならねえんだよ。
お上がりよ。
いいかい?そのかわり上がってもいいからお前さんは今日酒飲ませないよ。
お酒飲むと変わっちゃうからね」。
「さようでござんす。
本日はお茶は飲みません。
お茶だけにします」。
「おおそれならいいんだよ。
おい番頭さん2人逗留するからな頼むよ」。
「へ〜いお二人さんご案内」。
大きな声がかかります。
別にこれはご近所に「今客が2人入ったよ」という訳ではありません。
お内所という…お内所っても分かんないでしょうね。
吉原の入り口んとこに階段がございます。
この階段をどんどんどんどん上がって行くってえと右左に廊下になってます。
この階段の下にあるのがまあおかみさんご夫婦この方が住んでて「2名上がりましたよ」ってえとお茶を2つ用意する。
これをお内所というんです。
でこのお内所から引き付けて部屋へ通される。
この間ねうちの弟子にね「引き付け」ったら分かんないんですよ。
「吉原遊びに行くのは目回すんですか?」って言うの。
もうねこれも…落語嫌だね。
こういうの。
説明しなきゃいけねえんだ。
つまり「引き付け」ってえのは対面所ですね。
お客とそこへ来てるおばちゃんとが2人で「今夜はいくらいくらで遊ばしておくれよ」って。
これを遣り手というの。
遣り手ってえからやたらにくれるのかと思うともらいたがるばばあでね。
これが…大きなお盆の上へお茶を2つ並べてお菓子が2つ入っとります。
こんなものは吉原で遊びに来るやつで食べるやつはいないの。
いつごろのお菓子だか分かんない。
安政3年からぐるぐる回ってるって。
「いらっしゃいませ。
本日はお泊まりだそうでありがとう存じます。
どなたかご存じの方は?へ?我々の方にお任せ頂けます。
さようでございますか。
ありがとう存じます」。
「それからないきなりお床入れってえのはやぼだよ。
遊ばしてもらうんだ。
お座敷でねわっと騒いでから奥へ引きこもる。
誰かいないかな?おい竹松はいるか?いたら呼んでやっておくれ。
それからな芸者が2人肩張ってる女の子ちっちゃい子な。
あの子たちにはお菓子か何か食べさしてやっておくれ。
こっちはお酒で飲むから。
あ向こっかわにいる人は酒飲まないからね。
頼むよ」。
「へえ存じております。
ただいまお支度を」。
参りますってえと大きなお杯この杯が口へ来るとねこの野郎本当に遊んでんのか偉そうな顔して遊びに来たのか分かるそうですな。
こら松葉屋のおふくろがいた時に聞いたんです。
「松葉屋のおかみの髷や酉の市」。
いい言葉ですね。
我々の先輩が作ったんですけどね。
でこのおかみが聞いたんですけど本当にお金持ちってえのは杯の方から口へ来るそうです。
「あ〜ごちそうさま。
ありがとうようん」。
これがお金持ち。
金持ちはてめえの方から進んで行くそうです。
杯持ちましてね。
「あっしに?どうもありがとうござんす」。
もう落語家は全部お金持ちじゃないですね。
こんなにゆっくり飲めるやついませんから。
みんな来たら飲もう飲もうって努力してるやつばっかり。
そいでこの大旦那が一杯ぐ〜って飲むってえと顔がぽ〜っと赤らんでまいりまして。
芸者さんの方も気を遣っていろんな踊りを踊ります。
最後に「浅い川なら裾までまくれ深くなるほど帯を解く」。
あんまり女学校では教えない踊りで…。
これ見た事ないでしょうね。
我々ありましたよ子どもの時分に。
みんな先輩に連れてかれてね。
吉原のお座敷へ入ってくの。
と若い女の子が3人ぐらい出てくんですよ。
で着物持ってましてね芸者さんがこの辺から声出すの。
・「浅い川なら裾までまくり深くなるほど帯を解く」つまり着物ですからぬれるといけないってんで徐々に上がっていくんですよ。
で一番最後にはしょってった上で「解く」ってえと慌てて上へ全部持ち上げておしまいなんだ。
あんまり衛生的にはよくねえ踊りだ。
またこれを旦那は喜んで見てんの。
で旦那の方はいいですよ。
さっきから酒飲んでんですから。
飲まねえ方の旦那だよ。
床屋の大将。
「何をくだらねえ事言ってやんでえ。
何が『裾までまくれ』だい。
ぬれちゃいけねえんなら裸でいろばか野郎。
面白くも何ともねえや。
お茶ばっかり飲ませやがって。
しょんべんばかりしてるよ。
おい今考えたんだけどよ向こうから見てるとこら確かにお茶わんだよ。
中に入ってんのはお茶わんだろうと茶だろうと酒だろうと関係ねえんだろ?俺にちょっとここへ酒入れてくれよ。
酒入れて…。
何?『主は今日飲ませません』何を言ってやんだい。
お客だよ俺は。
『飲んじゃいけねえ』って言った?あのお客が?いいんだよ。
お酒飲むんじゃねえんだから。
お茶飲んでんだから。
入れなよ。
うるせえなお前は。
名前は何ていうんだい?『たよりです』?ご無沙汰みてえな顔しやがって。
いいからいいから。
おっとっとっと。
そんなにやけくそになって入れなくていいよ」。
「あ〜ついでにもう一杯。
うんありがとう」。
2〜3杯立て続けに飲んだの。
すっかり酔っ払っちゃいまして。
前と何ら変わらなくなっちゃった。
第一目が据わってきましてね。
「あれかい?今日の旦那の相方。
太ってんね。
旦那。
その太ってる女抱いて寝んのかい?うちへ帰ってね水がめ抱いて寝た方が楽だよ。
嫌だね〜いくら太ってんのが好きだってあんなに太ってる女と寝る事はねえんだよ」。
「いつまで…お茶だけ飲んでたんじゃねえのか?だんだんお茶が酔っ払ってきたね。
おい!皆さんがご愉快にお遊びになってんだ。
自分だけよがってんじゃねえばか野郎!」。
「何を言ってる何を言ってんだよ。
俺だってここへ来たくて来た訳じゃないよ。
お前が『来い来い』って言うから来たんだよ。
何を言ってやがる。
すけべじじい」。
「何だこの野郎。
いつもと変わらなくなったな。
てめえみてえなやつはな…」。
「お何だっていうんです?」。
「せっかく連れてきてやったけどもう嫌だよ。
帰れ!」。
「帰れって言えば帰りますよ。
何を言ってんだい。
俺だって来たくて来た訳じゃないし帰れって言えば帰るよ」。
「そこをね旦那ちょっとお待ち下さい。
あちらの旦那様も酔っ払ってんでまあ今日はひとつあっしの顔…」。
「お前さんもね顔を出してくれんのはありがたいよ。
あんなものは見るのも嫌だ。
帰しなさい」。
「帰してよろしいんですか?旦那お帰り下さいって言ってますがね…」。
「いいんだよ。
俺が帰りゃいいんだろ?慌てさすんじゃねえ」。
ガタガタガタガタガタ。
「あら旦那落っこっちゃったよ。
ゲンちゃんいいんだってよ。
旦那帰しておくれ」。
「へえ申し訳ございません。
我々がついておりまして…」。
「あ〜いいんだ。
いつもの事だから。
ごめんよ。
これはなすまねえが終わったらみんなでそばでも食っておくれ」。
「へえありがとうございます。
おい皆さんお客からご祝儀もらったよ」。
「ありがとう存じます」。
「ありがとうございます」。
「ありがとうございます」。
「お〜そんなに大勢でお礼言う事はないよ。
私だってここへねお酒だけ飲みに来た訳じゃないんで。
そろそろ…。
何だ年寄りのくせにすけべだって思われるかもしんねえけど…ちょいと部屋へ案内してくれ」。
「あっ失礼致しました。
おいお部屋へご案内。
お供お供お供」。
す〜っと行きます。
その時分我々はそんなお部屋で遊んだ事ありませんが大体我々が遊ぶってえと4畳半で真ん中に白い電気の球が1つぶら下がってんの。
これで両方…。
つまり4畳半に2組入れちゃうんですね。
こういう方になるとそうはいきません。
ど〜んと入れられた大部屋ご自分が座ってる所に真ん前に長火鉢があるの。
後ろっかわにってえと全部たんすが置いてあんの。
あれがおかしいですね。
聞いた事あんですよ。
「どういう訳で吉原へ来るとたんすが置いてあんの?横へ置かねえで後ろへ置いてあるってのはどういう訳?」。
横に置くと開けて持ってっちゃうやつがいんの。
後ろならこういうふうに手が回りませんから。
旦那来るってえと喜んで…。
「ああありがとうよ。
ごめんごめん。
酔っ払うと違ってくるのあの男は。
ハハハ。
あのなもう一杯飲んでそれからゆっくり寝かしてもらいたいと思うんだ。
いやお酒でいいんだよ。
なかったら…。
頼みゃいいじゃない。
持ってきておくれ。
花魁来たね。
あいあいどうも」。
「申し訳ございません。
キサラギと申します。
こんな日に限って連れ初会が入っております」。
「何だい?その連れ初会ってのは」。
「河岸の連中が大勢で上がりまして今お部屋で騒いでおります。
あちらに回しを取らして頂きとう存じます」。
「ああ回しね。
これはしょうがねえだろ。
江戸のしきたりだから。
関西はないんだよそんなの。
うん分かった。
行ってきな。
私だって別にね何しにここへ来た訳じゃねえんだから。
何なんかがあんたが何の時にここへ入れてくれりゃいいんだよ。
あたしゃそれまで何して待ってるから」。
何だかよく分からなくなっちゃった。
あの…お遊びになった方はお分かりですがあの里ばかりは一人では寝られないの。
といって女がいたらなお寝られないの。
変なとこなの。
旦那さっきからタバコばかりパクパク吸っちゃって…。
「ふぁ〜何やってんだろうね」。
「昔ああいう女に会ったよ。
『ちょっとおトイレ行ってくるわ』ってんで行きやがって帰ってこねえんだよ。
『長えなお前のしょんべん』って言ったら『私はうし年だから』って。
ばかにされてるようなもんだよ。
それにしたって帰ってくるがいいだろ。
なにもこんなとこでぼ〜っとして…。
あ〜こんな事だったら孫におもちゃでも買ってやりゃあよかった。
女郎屋の2階でおもちゃの心配してるようじゃさい先はよくねえな。
来たよ。
戻ってきましたよ」。
・「正月が来ようが盆が来よが3俵からお米で縁はない」「…なんてね。
ちょいと!ちょいとおじいちゃん。
おじい…」。
「おいおいよしなよ。
おじいちゃんって言われたかったらうちにいるんだよ俺は。
おじいさんって言われたくねえからここへ来てんだよ」。
「何を言ってんだ。
おじいちゃんじゃないの。
私断っとくけどね世の中で一番嫌いなのは年寄りなんだよ。
その次に嫌いなのが坊主頭なの。
あんた両方兼ね備えちゃってるからね。
やだよ私のそばへ来ちゃ。
ここ…ここが陣地よ。
あんた向こうっかわ。
私はこっち側。
あ〜疲れて眠くてしょうがないんだよ。
勘弁しておくれよ。
今日はね何かしちゃやだよ。
本当に…やだよ」。
「おいやだよっていびきかき始めたよ。
ふざけんじゃねえやこの野郎。
なにもねお前の寝顔を見に来た訳じゃねえんだよ。
起きてるから面白えんだよ。
坊主は嫌だ坊主は嫌だって…。
てめえの頭見てみろ。
坊主頭どころの騒ぎじゃねえ。
立兵庫なんて大きな頭結いやがって。
櫛笄もいっぱいだね。
いっぺんその嫌な坊主になってみるか。
面白え事考えたな。
こりゃ楽しみが出来たよ。
遊びに来たかいがあったね」。
「おとなしくしてるんだよ」。
お湯で自分の持ってきた手拭いをぬらすってえときゅ〜っと絞って髪の毛の脂を取ります。
「これからが仕事だよ。
動くんじゃねえよ。
俺だってやった事はねえんだから」。
「あのばかもこんなカミソリ置いてくからいけねえんだよ。
大体あいつがばかなんだよ。
いいかい?よいしょ。
動くんじゃねえぞ」。
「見ろ。
動いたから眉毛無くなっちゃったよ」。
「うん?眉毛がねえとおかしなもんだね。
両方なけりゃどうなんだろう。
面白え顔だね。
面倒くせえから全部坊主にしちゃおう」。
夜中によほど腹が立ったんでしょう。
このご隠居花魁を一人坊主にしちゃった。
途中で気が付いたんですね。
これはえらい事した。
花魁を一人坊主にしちゃった。
こんなものはここで置いといた日にゃどのぐらい後で後悔するか分かんない。
帰っちゃおう帰っちゃおうってんで…。
「おい番頭さん番頭さん」。
「へえへえ」。
「ちょっと朝の用を思い出してなこれから帰らしてもらうよ。
げそ用意してくれ」。
「へい。
こちらの方に用意してございます。
お気を付けてお帰り下さい。
キサラギさんキサラギさんお客さん帰ったよ。
やだね。
ああいう事やるからねお客に嫌がられんだよ。
キサラギさ〜ん!」。
「うるさいねえ『キサラギさん』って…。
まだ真っ暗じゃないの。
だから年寄りの客は嫌なんだよ。
夜が明けて帰りゃいいんだよ。
こんなに早く帰ったって用もありゃしないのに。
何が…坊さんが帰った?ちょっとお待ちよ」。
(あくび)あくびをしたの。
燃えるような長じゅばんだて巻きを胸高にきゅ〜っと締めてあくびをしたから何が何だか分からないの。
丹波ほおずきの化け物みたいだな。
「帰ったって置いときゃいいんだよ。
なにも急に帰る…」。
「急に…」。
「やだよゲンちゃん。
『お客様帰った』ってまだいるよ」。
(拍手)2015/04/05(日) 14:00〜14:30
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日本の話芸 落語「坊主の遊び」[解][字]

落語「坊主の遊び」▽三遊亭圓歌▽第667回東京落語会

詳細情報
番組内容
落語「坊主の遊び」▽三遊亭圓歌▽第667回東京落語会
出演者
【出演】三遊亭圓歌

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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