-東アジア地域で唯一、歴史をめぐる争いがどんどん激しくなっている。根本的な理由は何か。
「戦争を経験した世代が生きている間は、むしろ和解しやすい。『いや、経験してみると、実際はそうではなかった』と言える人が誰か生きていたからだ。敗戦直後の日本人はおおむね、敵国の米国よりも、自国政府の方に憤っていた。軍部にだまされ、裏切られたと感じていた。周辺国に対し、ある程度罪悪感も抱いていた。問題は、そうした感情や経験を有する世代が、今では姿を消したということ」
-日本が感じる奇妙な「被害者意識」について、何度も指摘してきたが。
「そうだ。その根はまさに、戦争経験にある。自国政府にだまされて誤った戦争を行った、裏切られたという思い。まさにそのせいで、敗戦国日本の国民は、よその国で戦争を行いながらも、戦後は自分たち個々人が被害者だと感じてきた。突き詰めると、この裏切られたという思いは人間的には理解ができる一方、無責任なものでもある。『想像力の欠如』とでもいおうか。自分自身を、加害者と被害者どちらの立場にも置くべきなのに、そうしなかった。私は、安倍首相が慰安婦・徴用被害者、韓国人などに謝罪するだけでなく、日本国民にも日本政府を代表して『だまして申し訳ない』と謝罪すべきだと思う」
-韓国の問題はないか。
「ベトナムはフランス・米国と戦い、勝った。インドも英国に勝利し、独立をかちとった。それでも両国は、フランスや米国、英国に向かって、特に謝罪を要求したことはない。心理的に、そうする必要を感じなかったようだ。これに対し韓国は、独立運動を行ったものの、外部要因で解放された。日本が謝罪と妄言を繰り返すのも大きな一因だ。日本の立場から見れば、日本政府が数え切れないほど謝罪したのは事実だ。今では少し違うが、1990年代前半、慰安婦問題が初めて浮上したとき、日本政府は本当にしっかりと認めて謝罪した。今では日本政府が『どんな謝罪をしても、韓国を満足させられない』と考えているのではないかと思う。『日本が謝罪するとしよう。果たしてそれは紛争の終息につながるのだろうか、逆に、より多くの訴訟の出発点になるのでは』と疑っているようだ」