小笠原サンゴ密漁:中国人船長「収穫は12グラム」
毎日新聞 2015年04月08日 10時00分(最終更新 04月08日 10時04分)
◇借金苦で一獲千金狙う
小笠原諸島(東京都)周辺の領海内でサンゴを密漁したとして、外国人漁業規制法違反に問われた中国・福建省出身の船長、林本章被告(43)に対する7日の横浜地裁判決。公判では、林被告が生活苦から抜け出そうと一獲千金のもうけ話に飛びつき、漁具の購入費や燃料代などでさらに借金を積み上げていく経緯が明らかになった。
「家族の生活を支え、子供に教育を受けさせたかった」。林被告は動機についてこう語った。不漁で昨年1〜10月の収入が4万〜5万元と前年の半分まで落ち込み、「小笠原のサンゴが非正規ルートで高値で売れる」といううわさにすがった。
サンゴ漁用に自船を改造したり、2カ月分の燃料や食料などをそろえたりするのに90万〜100万元かかり、「親戚や友人から借金した」と説明。検察側に「密漁で借金も返せると思ったのか」と問われると、「もうかるといううわさを聞いたから」と言葉少なに答えた。
同様の動機で密漁に参入した船長もいる。「十数万から100万元、もうかったらしい」。公判中の同省出身の船長、謝華文被告(52)は、5年前に購入した漁船の借金75万元の返済期限が迫る中、こんなうわさを聞きつけて密漁を始めることを決めた。多額の借金をしてサンゴ漁具などをそろえ、船員を雇った。
逮捕時に船内に残っていたサンゴの破片4個(計12グラム)が、収穫の全てだったという。謝被告は「網を海に降ろせば採れると思っていた」と語り、「借金で財産はほとんど残っていない」と漏らした。【松浦吉剛】