糖尿病:ウイルス感染きっかけに発症…関係する遺伝子特定

毎日新聞 2015年04月07日 18時56分

 糖尿病のうち、ウイルス感染などをきっかけに発症するとされる1型糖尿病に関係する遺伝子を九州大学(福岡市)の研究班が世界で初めてマウス実験で特定した。人でも共通する遺伝子の仕組みがあると考えられ、ワクチン開発につながる成果だとして7日、英オンライン科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。

 糖尿病患者は国内に約950万人いるが、このうち1型は数%で子供が発症する例が多い。生活習慣病に関係はなく、発熱など感染症の症状を伴い発症するため、ある種のウイルス感染が原因の一つと考えられている。

 九大医学研究院保健学部門の永淵正法教授(ウイルス免疫学)らは、ウイルス感染の防御に関わる「チロシンキナーゼ2遺伝子」に注目し実験した。この遺伝子がないマウスを7匹作成し、1型糖尿病との関連が疑われる種類のウイルスを感染させて野生のマウス7匹と比べた。遺伝子がないマウスは7匹すべてが感染3日後から糖尿病になり、野生マウスは発症しなかった。

 研究班は、発症したマウスを病理解剖し、人と同じようにインスリンを作る膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島ベータ細胞が破壊され、糖尿病になったことも突き止めた。

 永淵教授は「糖尿病とウイルスの関連は長く指摘されてきたが、初めて遺伝子レベルの仕組みを特定できた。今後は他のウイルスでも実験を重ね、複数の原因ウイルスを特定することでワクチン開発などにつなげたい」としている。【関東晋慈】

最新写真特集