「リン酸・カリを安く効かせる」コーナーより
リン酸が効いたのか?
ラッカセイ混作でナスがピーマンがピカピカに神奈川・千田富美子
土の中にイイコトしてくれる作物
ラッカセイとの付き合いは、『現代農業』2004年5月号55ページの記事で、「ラッカセイを間作・混作すれば、リン酸が効いて収量や品質がアップする」という内容を読んだときからです。私の場合は施肥は鶏糞や土着菌ボカシが中心で、リン酸がどうとか、ふだんあまり意識しているわけではないのですが、いつも不耕起の畑に上からバラまくだけの施肥なので、土の中(地下部)にイイコトをしてくれる作物、というのが魅力に感じました。
筆者。小さな畑で循環型有機農業を実践。今日はラッカセイを収穫 株元に混作、ピーマンいきいき
最初は混作のイメージがわかなかったので、間作というのでしょうか、ナスやトマトなどの隣のウネにラッカセイの苗を定植しました。しかし毎年秋になると、カラスが来てラッカセイをほじくり返し、ウネを荒らします。なんとか収穫できたものをビニールハウスの中に干していたら、今度はナニモノかがビニールを破って中に入り、平らげられたり……。おかげで栽培意欲があまり湧いてこない年が続きました。
食べるにしても、ラッカセイは殻ごと茹でると40分もかかります。殻をむけば8分茹でるだけですが、ペンチで殻をむく作業は意外と手間。結局春まで残って、播くタネに余裕が出た年がありました。そこでポットに播いたあと、残ったタネをピーマンの株間に2、3粒ずつ直播き。すると、夏の盛りのころにはラッカセイがピーマンの根元を覆い、ピーマンはイキイキとたくさん実をつけ、霜が降りるころまで収穫できました。これに勢いを得て、翌年からはナスとトマトの株間にもラッカセイを直播きするようになったのです。
2012年秋、この地域にイノシシが現われました。90歳になるお年寄りも初めてのことだそうです。大きなイノシシが毎日のようにやってきて、好物のラッカセイを掘って食べていきます。ウネのラッカセイはほとんどなくなりましたが、果菜類の株間に育っていたラッカセイは無事でした。それからは「ラッカセイだけのウネ」はやめ、畑にある作物のほとんどの株間に播くことにしています。
畑でナスはピカピカ光っています。ピーマンも肉厚でシャキシャキ感があります。トマトはモグラが根元を通らなくなったのか、立ち枯れが少なくなりました。混作の成果かな?とこのごろ思います。
ジャンボラッカセイ(右)と黒ラッカセイ(左) 11月下旬、静岡に就農した知人が畑に来て「まだナスがなってる!花も咲いてる!」と驚いていました 黒ラッカセイにも挑戦
ラッカセイは6月中旬、一晩水につけてから播きます。主にジャンボラッカセイを播いていましたが、混作でもカラスには見つかって秋の食害がひどいので、昨年からは殻のかたい黒ラッカセイも播いています。ただこちらは草丈が高く、ピーマンや丸ナスなどが覆われてしまいそうになるので、隣のウネに播いたほうがいいのかな?
ナスもピーマンも株をそのままにして畑で冬を越し、春に残っている実からタネをとって苗をつくります。袋のタネより発芽が早く、大地にしっかり根を下ろした命の循環を感じています。
(神奈川県南足柄市)
ラッカセイでリン酸が効く理由
ラッカセイはマメ科なので、根に根粒菌や菌根菌がよくつく。根粒菌はチッソ固定が得意、菌根菌はリン酸やミネラル類を作物に供給するのが得意。ラッカセイが増やした土中の菌根菌は混作や後作の作物の根にも共生して、リン酸をスムーズに供給する役割を果たすそうだ。よくラッカセイとナス科野菜(トマト・ナス・ピーマンなど)の混作は相性がいいといわれるのも、このせいかもしれない。
またラッカセイは、土中の難溶性鉄型リン酸を溶かして吸う力があることでも有名だ。施肥したことのない非耕地で、ソバも育たないほどなのにラッカセイが元気に育ったというデータもある。鉄型リン酸は、耕地では畑よりも田に多い。
この記事の掲載号『現代農業 2015年3月号』特集:元肥でトクする百科
広がる イネのオリジナル直播/冬春野菜の残渣処理/果樹のすんなり改植/農家自ら肉の直売/花粉症よ、サヨウナラ/ひな祭りをにぎやかに ほか。[本を詳しく見る]