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中国外貨準備をめぐる「怪」

2015年04月08日

中国外貨準備をめぐる「怪」


 2014年通年の中国の経常収支は2138億ドルの黒字、また海外から中国への直接投資は1985億ドルだったようです。ここからは100億ドル単位で丸めますが、2014年通年で中国には4100億ドルの外貨が流入していたことになります。

 ところが2014年12月末の中国外貨準備高は3兆8400億ドルで、2013年12月末の3兆8800億ドルから400億ドル減っています。この数字は中国で報道されていたものです。

 中国は厳しい外為規制を行っているため、経常黒字や海外からの投資で中国に流入した外貨は中国人民銀行(中央銀行)が一元的に買い入れて外貨準備としています。2014年通年では貿易黒字と海外からの直接投資で4100億ドルの外貨が流入しているのに、外貨を一元的に買い入れている外貨準備が400億ドルも減少しています。

 中国からの対外投資があるからだろう? このことについては少しあとで解説します。

 2004年から2011年まで8年間の累積経常は1兆8200億ドルの黒字、海外からの累積直接投資が1兆2700億ドル、つまりこの間に3兆900億ドルの外貨が中国に流入していました。これらの数字はJETROが毎年集計している数字を合計したものです。

 中国の2003年12月末の外貨準備は4000億ドル、2011年12月末が3兆2100億ドルだったので、この間に外貨準備は2兆8100億ドル増えています。つまりこの間の外貨流入額と外貨準備増加額は「1割程度しか違わない」ことになります。

 つまり中国からの対外投資が外貨流入額の「1割程度しかない」とも考えにくいので、国家が主導する対外投資は(基本的に個人の対外投資は認められていないのでほとんどが国家主導のはずです)、そのまま外貨準備に「額面」で計上されたままのような気がします。

 つまり中国が世界中に「投資」している外貨は、2010年にベネズエラのチャベス大統領(当時)とその親族にばら撒いた200億ドル(形だけは借款ですが、大半が賄賂などで消えているようです)なども含めて、外貨準備に「額面」で計上されたままと考えます。

 石油閥を仕切っていた周永康とその一族が「横領」したとされる150億ドルも、まだ外貨準備に「額面」で計上されているはずです。「横領」といっても、国家が外貨準備から「投資」した資金を、そっくり海外で横流してどこかのオフショアにでも飛ばしてしまわない限り、そんな巨額になるはずがないからです。

 これも由々しき問題ですが、もっと怖いのはここからです。

 2012年に薄熙来が逮捕されて中国共産党上層部に動揺が走ったはずですが、その2012年から2014年の累積経常黒字は6100億ドル、同じく海外からの累積直接投資が7100億ドル、合わせて1兆3200億ドルの外貨が流入しています。ところが2011年12月末の外貨準備が3兆2100億ドルで2014年12月末が3兆8400億ドルなので6300億ドルしか増えていません。つまり6900億ドルの外貨が「どこかに消えている」ことになります。

 2014年だけだと4100億ドルの外貨流入に対して外貨準備が400億ドル減少しているため、差し引き4500億ドルもの外貨が「消えている」ことになります。
 
 先ほど書いたように、国家主導の対外投資は外貨準備に「額面」で計上されたままと考えるので(つまり帳簿上では「ある」ことになっている)、この4500億ドルは(2012年からだと6900億ドルは)、まさに外為規制をかいくぐって「どこかに」消えてしまった外貨となります。

 またFRBが発表した2014年12月末の中国保有の米国債は1兆2443億ドルしかなく(日本は1兆2309億ドルであまり変わりません)、同時点の外貨準備3兆8400億ドルの32.4%しかありません。

 中国の外貨準備は金(きん)があまり多くないため、いくら少なく見積もっても60%(2兆3000億ドル)が米国債でないと不自然です。つまり中国の外貨準備はドルだけでも1兆ドルほど「何が何だかわからない」ことになります。

 つまり不正や投資損で「消えてしまった外貨」がそのまま「額面」で計上されているからと考えます。それに加えて2012年頃から外為規制をかいくぐって巨額の外貨が「どこかに」消えていることになります。
 
 こういうタイミングで中国が主導するアジア・インフラ銀行が出てきた理由がわかるような気がします。穴のあいた外貨準備の「辻褄合わせ」と考えておくべきでしょう。

 それが江田憲司・維新の党代表によると「中国外交の勝利・日本外交の敗北」となってしまいます。元通産官僚なので、もう少し聡明な方だと思っていたのですがね。

  3月25日付け「アジア・インフラ銀行は中国・融資平台の国際版」も読んでみてください。


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