認知症:行き倒れ男性 消防や警察は保護せず2日後死亡

毎日新聞 2015年04月08日 06時30分(最終更新 04月08日 08時45分)

認知症の男性が行方不明になり発見された場所
認知症の男性が行方不明になり発見された場所

 昨年8月に横浜市の認知症の男性(当時83歳)が行方不明になり、東京都中野区で倒れているのを発見されたが、駆け付けた消防や警察は救急搬送や保護をせず、2日後に死亡していたことが分かった。消防は「男性が搬送を辞退した」として現場を離れ、警察は「受け答えがしっかりしていて認知症の人とは思わなかった」という。認知症に詳しい専門家は「再発防止のため協議を」と呼び掛けている。

 警視庁や家族によると、男性は2014年8月19日夕、横浜市鶴見区のデイサービス施設から行方不明になり、家族は同日夜、神奈川県警に届け出た。

 21日午前10時20分ごろ、JR中野駅近くの路上で男性が倒れているのが見つかり、東京消防庁中野消防署の救急隊が先着、警視庁中野署の駅前交番の警察官も駆け付けた。男性はのどの渇きを訴え37.6度の発熱があったが、搬送を拒んだという。救急隊は「搬送の必要性を認めたが傷病者(男性)が辞退」との項目にチェックを入れた不搬送の同意書に、男性に署名させて現場を離れた。

 一方、警察官に対して男性は氏名を答え、住所は話さず、生年月日は「昭和26年2月26日」(実際は昭和6年2月4日)と答えたという。警察官は男性に水を飲ませ、「休憩できる安全な場所」と考えて約300メートル東側にある紅葉山公園に連れて行き、ベンチに座らせ、現場を離れた。

 ところが21日午後10時過ぎ、「男が公園で寝込んでいる」との通報があり、午前のやり取りを知らない同交番の警察官が駆け付けると、この男性が公園トイレの床で寝ていた。警察官が救急車を呼ぶかと尋ねると「大丈夫」と答え、「家はないんですか」と聞くとうなずいた。名前と生年月日の問いにも「大丈夫」を繰り返し、後に分かるが実際とは1字だけ違う氏名を答え、この時も警察官はそのまま現場を離れた。

 男性は23日朝、トイレ脇の地面で死亡しているのが見つかった。解剖の結果、死因は脱水症と低栄養状態の疑い。身元不明遺体として扱われ、家族が今年2月、警視庁のホームページで持ち物や特徴が一致する遺体情報を見つけ、ようやく身元が判明した。男性は最初の発見時に正確な氏名を答えていたが、警察はこの時、身元照会をせず、死亡後も家族が見つけるまで身元を特定できなかった。

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