京都市の公衆WiFi「危険」 府警「犯罪インフラに」警告
外国人など観光客らが効率的にインターネットを使えるように全国で整備が進む公衆無線LAN「WiFi(ワイファイ)」をめぐり、自治体間で接続環境の安全性に格差が生じている。観光客獲得に向け、利便性を優先させようとする自治体間の競争が背景にあり、国は「安全性をおろそかにすると、犯罪インフラになりかねない」と懸念する。京都府警は、京都市のWiFi環境のセキュリティーに問題があるとして、市に改善を要請している。
■通信傍受・犯罪悪用恐れ
京都市は2012年8月から民間の通信会社と共同で無料のWiFi整備を始めた。当初は、接続する際に指定された宛先にメールを送る仕組みで、ある程度は利用者の特定が可能だった。しかし、昨年12月以降、メールを送らなくても利用規約に同意するだけで24時間無料で接続できる方法に簡略化。市によると、バス停など約1500カ所に無料スポットを整備し、今年3月の利用件数は延べ62万2千件に上るという。
一方、府警サイバー犯罪対策課の分析で、市の現行のWiFi環境は、犯罪予告や薬物密売に悪用された場合、発信元の特定が困難だと判明した。
利用者の無線通信が暗号化されず、他人に傍受されたり、個人情報が漏れる恐れもあり、府警は「ネット環境があまりに危険」として3月、市にセキュリティーの向上を求めた。
市は「他の観光都市に負けないため、利便性を追求した。今後、利用時間に制限を設けるなど安全対策を見直す」としている。
■安全性、自治体で差
総務省は、新たな通信網の確保を目指してインターネットに接続できる公衆無線LAN「WiFi」の普及を進めている。観光や防災を目的とした整備を補助金の対象としており、1月現在、全国の408市区町村がWiFi整備に取り組んでいるという。
全国では、福岡市が京都市と同様、使いやすさを優先し、利用時に身分証明書の提示を求めず、通信情報の暗号化もしていない。
一方、神戸市は安全対策として、WiFiを利用する外国人観光客にパスポートの提示を求め、名前や国籍を記録してからIDとパスワードを発行するなど、自治体間で管理態勢にばらつきが出ている。
総務省は「安全面で意識の低い自治体がある。セキュリティー対策の重要性やノウハウを周知徹底する」としている。
■国が統一基準を
立命館大情報理工学部の上原哲太郎教授(情報セキュリティー論)の話 公衆無線LAN整備事業を進めるにあたり、重要な利用者の本人確認を徹底していない自治体があるのは問題だ。自治体間でインターネットの安全性に格差があると、日本全体が危険にさらされることになる。安全対策については国が主導的に統一した基準をつくり、自治体や事業者が運用すべきだ。
【 2015年04月08日 03時50分 】