(2015年4月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中国政府もよもや、イスラエルなどの往年の米国同盟国を新銀行に呼び込めるとは思わなかった?〔AFPBB News〕
中国政府は自分たちの幸運を信じられないほどだ。米議会での苦境にアジアの追い討ちをかけるように、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は先週、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を確約した。
ネタニヤフ氏と、3月3日に同氏が米議会で行った演説で恥をかかされたバラク・オバマ米大統領はもともと不仲だが、中国が最初に新銀行の構想を立てた時、イスラエルほどの往年の米国同盟国を呼び込むことは考えられなかったはずだ。
AIIBになびいた英国の一見突拍子もない離反行為――英国は米国のパートナー国として、新銀行に関する米国の反対論を無視した最初の国――として始まったものは、中国の純然たる戦略的勝利に発展した。
オーストラリアや韓国のような米国の伝統的な軍事同盟国を含め、50カ国以上がAIIBへの参加を決めた。唯一、日本だけが――今のところ――米国への支持を貫き、新銀行の統治と透明性の基準に対するオバマ政権の懸念を繰り返している。
ベトナムでの反中デモを受け、政策を転換
中国政府の成功はただの幸運だけでなく、賢明な政策調整の成果でもある。2013年11月の東シナ海上空での防空識別圏(ADIZ)の設定宣言から昨年5月のベトナム沖での石油掘削装置(リグ)設置に至るまで、中国の「ハードパワー」の主張はほぼすべての地域近隣国との衝突を招きそうに見えた。
中国の外交政策の専門家らは内々に、南シナ海でのやり過ぎの後、ベトナム各地で勃発した暴力的な抗議デモが警告になったと認める。北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)年次首脳会議開催をわずか6カ月後に控え、中国政府はハードパワーの誇示をやめ、ソフトパワーによる説得に切り替えた。