[PR]

 イラク政府が過激派組織「イスラム国」(IS)から奪還した中部ティクリートで、政府への不信感が広がっている。軍事作戦の主力を担ったイスラム教シーア派の民兵らによる略奪行為が相次いで確認されたからだ。街で多数を占めるスンニ派住民は、恐怖政治を敷いたISの撤退を喜ぶ一方で、「解放ではなく、新たな占領だ」と懸念する。

 「治安当局はこの犯罪に関わった者を逮捕した。裁判を受けさせる」。6日、イラクのアバディ首相は記者会見でこう述べ、略奪に厳しく対処する姿勢を強調した。少なくとも住宅67軒と店舗85軒が、略奪されたり焼き打ちにあったりしたことを認めた。

 政府が1カ月の作戦の末にティクリート奪還を宣言したのは3月31日。主力を担ったのは正規軍ではなく、シーア派の民兵だった。シーア派の隣国イランの精鋭部隊も加わった。

 略奪など不法行為の背景にあるのは、宗派間の根深い相互不信だ。ティクリートはスンニ派主導の独裁体制をしいたフセイン元大統領の出身地で、住民もスンニ派が大半。フセイン政権下で虐げられたと感じるシーア派住民や、イラン・イラク戦争を経験したイランによる復讐(ふくしゅう)の対象になりかねない。

 昨年ティクリートから避難したアブムハンマドさん(52)は、街に残った住民から聞いた話として「民兵たちはイランとの戦争を主導した元イラク軍将校の名簿を持ち、その家を狙っていた」と証言した。