酒サムライ:若手蔵元ら奮闘 「ワインの首都」英国に照準

毎日新聞 2015年04月07日 13時11分(最終更新 04月07日 18時17分)

王室料理長のフラナガン氏(右から4人目)らを招いて開かれた日本酒パーティー。肉でもお菓子でも合う日本酒の魅力をアピールした=ロンドン市内の駐英日本大使公邸で2015年2月17日、坂井隆之撮影
王室料理長のフラナガン氏(右から4人目)らを招いて開かれた日本酒パーティー。肉でもお菓子でも合う日本酒の魅力をアピールした=ロンドン市内の駐英日本大使公邸で2015年2月17日、坂井隆之撮影

 具体的な活動の一つが、毎年4〜7月ロンドンで開催される世界最大規模のワイン品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」での「日本酒部門」の設立だ。審査員の半数を日本人以外が担い、「世界の味覚」に通用する日本酒の質の高さをアピールする。07年にスタートし、出品銘柄数は当初の228から昨年は725に拡大した。欧州でスパークリング(発泡)酒の人気が高いことを受けて14年から発泡日本酒を審査対象に加えるなど、海外の嗜好(しこう)を把握する役割も果たす。14年の最高賞は製造から10年の古酒。果実酒のような甘みがワイン通の心をとろかした。「IWCに出品を始めた直後は『外国人に日本酒の味はわからない』と消極的な蔵元さんもいましたが、徐々に浸透しました」(吉武さん)。背景には、入賞したお酒に国内外から注文が殺到する、という現象もあった。

 吉武さんは「高級ワイン並みの価格の日本酒には、それに見合う品質があることを発信したい。産地の文化や風土も含めて楽しむワインと日本酒には共通点があり、同じルートに乗せられれば世界に広がる」と期待する。世界最大のワイン教育機関「ワイン・スピリッツ教育財団」(ロンドン)に働きかけ、昨年8月に日本酒の講座も開設した。目指すのは「和食限定」の現状を超え、西洋料理店でも日本酒が普通に並ぶ姿だ。

 嗜好(しこう)の多様化などで日本での日本酒消費量は減少傾向が続き、蔵元の数も過去25年で4割近く減少した。佐浦さんは「海外で評価されることで蔵元の自信にもつながる。『上の世代の飲み物』というイメージも変えたい」と話す。英国だけでなく日本も元気にしようとするサムライたちの心意気は、伝わるだろうか。

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