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【本紙前ソウル支局長公判】
「産経問題」は日韓の大きな外交問題に 価値観共有できぬ国、日本が失望 加藤達也前支局長手記
3月30日の公判で、朴槿恵大統領をめぐる当時の噂を事実上否定した李東根(イ・ドングン)裁判長の見解は、これまでの審理や検察の捜査に則せば妥当なものだろう。私はその見解に異を唱えるつもりはない。
在宅起訴直前の昨年10月2日に行われた3回目の事情聴取で、取り調べを担当した高泌亨(コ・ピルヒョン)検事はこう問うてきた。
「当検事室が確認したところ、セウォル号事故発生当日、問題となった7時間に朴槿恵大統領は青瓦台内で事故に関連して書面と有線(電話)で報告を受け、指示をして、その職務を遂行していたものと確認されているが、どうですか」
私は、次のように答えた。
「コラムで噂を取り上げた当時には明らかでなかった社会的関心事がその後、検察の捜査で明確になった。これは社会的に有意義な、いいことだと思います」
なぜなら、コラムは朴大統領の噂を書こうとしたのではなく、こうした噂が流れていること自体が政権に対する韓国社会の評価を表しているということを日本の読者に伝えたいと書いたものだからだ。
裁判長は、私がコラムを書いた当時には表に出ていなかった元側近、鄭(チョン)ユンフェ氏の携帯電話の通信記録や大統領府警護室の記録などを基に合理的な判断にのっとり一定の結論を引き出した。