河井、並びにキム・ミンヒョクへの処分が発表されました。

2015明治安田生命J1リーグ 1stステージ 第4節 退場に伴う 河井 陽介選手(清水)の出場停止処分について

【処分内容】
1試合の出場停止
【処分理由】
2015年4月4日(土)2015明治安田生命J1リーグ 1stステージ 第4節(ベガルタ仙台 vs 清水エスパルス)の試合において河井 陽介選手は主審より退場を命じられた。
(公財)日本サッカー協会 競技および競技会における懲罰基準に照らして審議した結果、相手選手に対し斜め前方から足の裏を見せて過剰な力でタックルした行為が、「著しい反則行為」に相当すると判断、1試合の出場停止処分とする。
2015明治安田生命J1リーグ 1stステージ 第4節 の行為に対する キム ミンヒョク選手(鳥栖)の出場停止処分について
【処分内容】
4試合の出場停止
【処分理由】
2015年4月3日(金)2015明治安田生命J1リーグ 1stステージ 第4節(鹿島アントラーズ vs サガン鳥栖)の試合において、キム ミンヒョク選手は鹿島アントラーズ金崎夢生選手に対するホールディングの反則により、主審より警告を命じられた。その 際、倒れた金崎選手を左足で踏みつける行為が映像により確認され、この一連のプレーに関し、Jリーグ規律委員会に対して鹿島アントラーズより所定の手続き に則り申請があった。同委員会にて申請を基に、同行為について映像を用いて確認・検証し、また、審判員・マッチコミッショナー等およびキム選手にも事実関 係を確認した。
上記の事実関係の確認を踏まえ、本件について(公財)日本サッカー協会 競技および競技会における懲罰基準に照らして審議した結果、キム選手の金崎選手の 顔部分を踏みつけた行為は、「選手等に対する暴行・脅迫および一般大衆に対する挑発行為」に該当し、試合中に審判員が確認できなかった「極めて悪質な行 為」と判断、4試合の出場停止処分とする。
このうち河井の処分に関しては、前例通り1試合の出場停止となっています。
個人的には複数試合出場停止になってもおかしくないプレーだと思いますが、現状の規約ではその軽重に関わらず1回目は1試合。
ファウルの内容によって重さを変えるというのは、主観の入る危険性もはらんで難しく、現状の規約に基づいたこの裁定も致し方ないでしょう。
ただし、ACLなら最低2試合、欧州リーグなら最低4試合が基準であろうことを考えますと、日本も「著しく不正なファウルプレー」のラインを高めて、今後厳しく立ち向かうべきだと思います。
これを機に、規約そのものが見直されることを願います。

なお、この出場停止処分はレッドカードによるものですから、昨年からの規約変更に基づき、同一大会で消化。
直近のナビスコカップへの出場は可能となっております。
河井が水曜日の川崎戦に出場することは、何の問題もありませんが、受け止めるべき点はきちんと受け止めた上で、今後の試合に臨んで欲しいものです。



一方、ミンヒョクの出場停止は少し解釈の難しいものとなっています。
まず、あの場面でミンヒョクに対して扇谷主審は警告を示していますが、その理由はC1:反スポーツ的行為。
リリースにもあるように、踏みつけの前の「ホールディングの反則」に対して警告が出されたわけです。
しかし、その直後に起こった踏みつけ行為に関しては、扇谷主審を含めた審判団の見落としがあり、懲戒罰が出されていませんでした。
そのため、「試合中に審判員が確認できなかった極めて悪質な行為」を映像にて確認し、追加処分という形になっています。

もし、あの時点で扇谷主審が踏みつけに気づいていたら、それは間違いなくレッドカードを提示していたでしょう。
しかし万一、その場で認めつつも、C2:ラフプレーに留めていたら、「既に主審が裁定を下した」ということで、追加処分を行うのは難しかったかと。
見落とした扇谷主審の責任は問われるべきですが、見落としたおかげで追加処分が下せるという形になってしまっています。
この辺りは、映像技術が発達した現在、やり方を考えないといけませんね。。。

なお、こういう事例は過去にもあり、昨年も横浜FCのパクソンホが、試合後の映像チェックで「乱暴な行為」を認められ、委員会から出場停止処分を科されています
2014J2第14節 福岡@湘南 消えた警告 - とりあえず
ちなみに、この時は「横浜FCの訴え」を受けてチェックを行ったわけではなく、委員会が通常行う検証の中で発見し、追加処分を下しています。
今回の例も、鹿島からの質問書がなくても、委員会は自発的に追加処分を下していたでしょう。

その上で、その処分内容についてです。
前例を探ると、2007年の例が出て来ます。
山形FW豊田に6試合の出場停止処分 | ゲキサカ[講談社]
Jリーグは20日、山形のFW豊田陽平(22)に6試合の出場停止処分を科したと発表した。豊田は15日の草津戦で接触プレーにより倒れた際に、相手の顔 面をけって全治3週間のけがを負わせた。試合中に警告や退場処分は受けなかったが、規律委員会が「選手などに対する著しい暴行・脅迫」に相当すると判定し た。23日の徳島戦から10月14日の愛媛戦まで(天皇杯含む)が対象となる。

(0:40~)
こちらも主審の見落としに対して、委員会が映像で豊田の蹴りを認定し、「選手などに対する著しい暴行・脅迫」として6試合の出場停止を科しました。
これを前提とするなら、ミンヒョクも6試合かな?と予想してたのですが4試合の出場停止。

こう聞くと、ちょっと軽い印象を受けますが、実は2007年から現在までに、JFAの懲罰規定が変更されていました。
競技および競技会における懲罰基準(2004年)
・2-2.他の選手、監督、コーチ、役員、職員その他競技に立ち会っている関係者(以下、「選手等」という)に対する暴行・脅迫および一般大衆に対する挑発行為
①1回目の場合:最低2試合の出場停止および罰金。
②繰り返した場合:最低4試合の出場停止および罰金。
・2-3.選手等に対する著しい暴行・脅迫(乱闘、喧嘩等を含む)
①1回目の場合:最低6試合の出場停止および罰金。
②繰り返した場合:最低12か月の出場停止および罰金。
・2-4.主審および副審に対する侮辱または公然の名誉毀損行為
①1回目の場合:最低2試合の出場停止。
②繰り返した場合:最低4試合の出場停止および罰金。
・2-5.主審および副審に対する傷害の意図のない乱暴な行為
①1回目の場合:最低4試合の出場停止および罰金。
②繰り返した場合:最低8試合の出場停止および罰金。
・2-6.主審および副審に対する暴行・脅迫
①1回目の場合:最低12か月の出場停止および罰金。
②繰り返した場合:無期限の出場停止
競技及び競技会における懲罰基準(2015年)
2-2.選手等に対する暴行・脅迫及び一般大衆に対する挑発行為
①1回目の場合:最低2試合の出場停止及び罰金
②繰り返した場合:最低4試合の出場停止及び罰金
2-3.選手等に対してつばを吐きかける行為
①1回目の場合:最低6試合の出場停止及び罰金
②繰り返した場合:最低12か月の出場停止及び罰金
2-4.主審及び副審に対する侮辱又は公然の名誉毀損行為
①1回目の場合:最低2試合の出場停止
②繰り返した場合:最低4試合の出場停止及び罰金
2-5.主審及び副審に対する傷害の意図のない乱暴な行為
①1回目の場合:最低4試合の出場停止及び罰金
②繰り返した場合:最低8試合の出場停止及び罰金
2-6.主審及び副審に対する暴行・脅迫
①1回目の場合:最低6か月の出場停止及び罰金。
②繰り返した場合:最低12か月の出場停止及び罰金
2-7.主審及び副審に対してつばを吐きかける行為
①1回目の場合:最低12か月の出場停止及び罰金。
②繰り返した場合:無期限の出場停止
以前存在した、
「選手等に対する著しい暴行・脅迫(乱闘、喧嘩等を含む)」
という、一発で「最低6試合出場停止」となる規定がなくなり、
「選手等に対する暴行・脅迫及び一般大衆に対する挑発行為」
にまとめられ、「最低2試合出場停止」となっています。

今回のミンヒョクは、4試合の出場停止ですから、この現行の規定に対しては、その倍の処分が下されるという極めて異例の形になっております。
河井のように最低限の数値に留めるのではなく、危険性や意図も考慮して、初回でも繰り返した場合と同等の処分を下しました。
ただし、過去の規約を元に考えると、むしろ減った数字になっているわけです。

なお、ミンヒョクの場合は、レッドカードによる出場停止ではなく、「規律委員会から下された出場停止」と考えられます。
そのため、その対象はリーグ戦だけではなく、その間のナビスコも含まれる形に。
それも踏まえると、リーグ戦の出場停止は2試合ということになります。

その辺りをどう感じられるかは人それぞれですが、少なくともJFAは今回のことを重く受け止め、現状の規約の中ではかなり踏み込んだ処分を下したと言えます。
後は、これらの前提になった規約が、そもそも妥当な数値になっていたのか、何故6試合から2試合に減らされたのか。
「著しく不正なファウルプレー」の最低1試合出場停止という規約と共に、その妥当性が議論され、今後の戒めになってくれることを願います。

参考までに、海外の事例。
サッカー界における複数試合出場停止処分まとめ - NAVER まとめ



とりあえず、今回の教訓として、
「競技規則と共に懲罰規定も毎年変わる」
ということを、自分自身改めて痛感いたしました。。。