アルツハイマー治療薬:「漢方薬」併用で効果アップ
毎日新聞 2015年04月07日 15時00分(最終更新 04月07日 18時58分)
アルツハイマー病の治療薬と市販の漢方薬「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」を併用することで、患者の認知機能低下や病気に特徴的なうつ状態に回復傾向がみられたと、慶応大などのチームが近く、日本老年精神医学会の英文誌に発表する。今後、投与する患者数を増やし、効果の検証や仕組みの解明を進めるという。
アルツハイマー病患者の脳では、情報をやり取りするための神経細胞の突起を包む「ミエリン」と呼ばれるさやが失われることが分かっている。チームが、アルツハイマー病マウスに、さまざまな薬剤を投与したところ、人参養栄湯では、失われたミエリンが再生されることに気づいた。
人参養栄湯は病後の体力低下や疲労回復などに使われる。自ら意思を決められる中程度の進行度の患者を選び、同意を得た上で、2011年から2年間、既存の治療薬「ドネペジル」(毎日5ミリグラム、商品名アリセプト)と人参養栄湯(同7.5グラム)を患者12人(平均年齢75歳)に投与。ドネペジルのみの患者11人(同75歳)と、症状の変化を比較した。
その結果、6カ月後には、併用した患者群ではドネペジルのみの患者に比べ、うつ状態を示す数値が改善し、その効果は2年続いた。また、記憶や判断力などの認知機能もほぼ同様の効果があった。一方で、妄想や無関心など他の症状では両者に差がなかった。
チームの阿相皓晃(あそう・ひろあき)・慶応大講師(神経科学)は「悪化していくだけと絶望していた患者や家族にとって朗報になっている。人参養栄湯のみでも有効なのか、重度の患者に効果があるのかなど、研究を続けたい」と話す。【田中泰義】