外交青書:「大戦へ深い反省」平和国家の歩み強調

毎日新聞 2015年04月07日 10時13分(最終更新 04月07日 11時22分)

 岸田文雄外相は7日午前の閣議で、1年間の外交活動をまとめた2015年版外交青書を報告した。戦後70年の歩みを振り返る項目を新設し、「日本が平和国家として歩んできた原点は、先の大戦の深い反省を踏まえた不戦・平和の誓いにある。平和国家としての歩みは変わることはない」と強調した。村山政権後の1996年版や、小泉政権下の06年版の「痛切な反省」という表現を、基本的に引き継ぐ姿勢を示した。

 青書は、戦後70年を「アジアと世界の平和と繁栄に貢献」したと評価。昨年7月の安全保障法制に関する閣議決定について「日本の平和と安全を維持し、存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守り抜くことは政府の最重要の責務」と強調する一方、「関係国に透明性をもって丁寧に説明」したとした。

 イスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)による日本人人質事件については「あらゆるチャンネルを最大限活用し全力を尽くした」と説明。「非道・卑劣極まりないテロ事件」と非難し、「人道支援などをさらに拡充し、テロと闘う国際社会において、自らの責任を毅然(きぜん)と果たす」と記した。

 地域情勢では、中国について「東シナ海を隔てた隣国であり、切っても切れない関係」として昨年11月の日中首脳会談など関係改善の動きを列挙した。一方、沖縄県・尖閣諸島周辺での中国船の領海侵入を「一方的な現状変更の試み」と批判。韓国に関しては「自由、民主主義、基本的人権などの基本的な価値を共有する」とした14年版までの表現を削り、「最も重要な隣国」と記すにとどめた。

 政府は対外発信強化の一環として06年以来、9年ぶりに全文英訳版を作成した。安倍政権の外交理念として国際社会にアピールしたい考えだ。【鈴木美穂】

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