日本人の知能劣化と右翼化 - 価値生産できない無能な貴族社会の結末

中国と日本の一人当たりGDPが15年後に並ぶと試算したとき、その値は約2万3000ドルである。中国と日本の人口比は、単純に10対1で仮定している。2014年のデータを見ると、日本の一人当たりGDPは3万8500ドルで世界ランク第24位、中国は7000ドルで第83位となっている。日本は中国の5.5倍で、中国は日本の約6分の1しかない。この差が徐々に詰まり、2030年に同じになるというのが私の予測である。3万8500ドルの日本の一人当たりGDPはどんどん縮小して、15年後には3分の2以下の2万3000ドルに落ち込んでしまう。逆に、中国の一人当たりGDPは拡大を続け、現在の3倍超の2万3000ドルに達する。下降する日本と、上昇する中国と、シェーレを描く二つの線が交差するポイントが2030年で、その時点の値が2万3000ドルだ。2万3000ドルという一人当たりGDPは、ランキング33位のバハマや34位のスロベニアと同じ水準となる。そんなバカな、いくら何でも荒唐無稽だと、そう批難されるに違いないが、たとえば、現在1ドル120円の為替が200円に切り下げられると、3万8500ドルの一人当たりGDPは一瞬で2万3000ドルに化けてしまう。470兆円ほどのGDPを円ベースで横這いで、すなわちゼロ成長で15年間推移させ、そのとき為替が1ドル200円になっていれば、この試算は現実のものとなるという結論だ。きわめてリアルな、むしろ控えめなエコノミクスの想定と仮説だと思うが、いかがだろうか。

エコノミクスの一つの指標ではあるけれど、実質実効為替レートで円の実力に注目すると、2010年を100とした指数で69.51に下落していて、何と1973年以来の低水準なのだと言う。この日銀発表の指標が示す円の実力は、1ドル300円にまで落ちぶれている。今の私のアバウトな感覚では、5年後に1ドル150円、10年後に1ドル200円という予想が浮かぶ。冷静に日本経済を考えれば、その線が常識的なところではないか。1ドル120円のレートを15年間維持できると、そう確信して断定した者がいたとすれば、その者の経済センスを疑わざるを得ない。ところで、最近はマスコミで話題になる機会が絶えたが、日本の一人当たりGDPのランキングは著しく凋落する一方で唖然とさせられる。2014年は世界第24位で、前年の15位より9ランク落とした。今世紀に入って14年、一人当たりGDPは伸びておらず、ずっと横這いが続いていて、各国比較の番付が下降の一途を辿っている。われわれの経済の将来トレンドは、円ベースで横這いを維持するのがやっとであり、為替が切り下げられていく中、ドルベースではマイナス成長が続くという厳しい見通ししかないのだ。消費需要が伸びない。内需を伸ばせられない。国民の購買力を増強させることができない。格差の構造が固定し、賃金が引き下げられ、負担が増え、生産年齢人口が減り、成長の条件がない。

一人当たりGDPについて、IMFの昨年の推計値をグラフにすると、4年後の2019年に日本と韓国の値が拮抗する予測になっている。日本は4万3500ドル、韓国は4万700ドル。1990年代を通じて、韓国は日本の3分の1から4分の1だったが、2000年代に入って猛然と差を縮めてゆき、2010年代に遂にキャッチアップという図になった。円安の中長期トレンドを加味して考えると、(ドルベースのGDPで)日本がプラス成長を続けて2019年に4万3500ドルになるという想定は楽観的すぎる。いずれにせよ、韓国が一人当たりGDPで日本を追い抜くのは時間の問題で、すでに秒読み段階に入ったと言ってよく、われわれは今からその瞬間を覚悟しておかなくてはいけないだろう。前回の記事で、この20年間の日本社会の右翼化を論じ、右翼本しか店頭で売れず、右翼言論にしか興味関心を示さなくなっている日本の言論市場の事実を述べた。私のような無名Blogの場合、読者は基本的に固定客で、フローのアクセスというのは少なく、従って言論市場の反応というものは伝わりにくい特性を持っているはずだが、それでも、記事のタイトルに「右翼」の語を書き、右翼批判の言論をストレートに提出すると、アクセスもぐっと少なくなり、ツイート数やRT数も減少する。読者が引いていることが分かる。あるいは、少しでも中国を積極評価した文章だと、途端に嫌われてしまう。

誰もがやるような、小沢シンパや反原連系の日常の政局ネタに即き、常套句的な安倍晋三批判の言語を並べて記事を纏め、タイトルを上げて「市場」に出すと、オーディナリーな数のツイートボタンが入って「消費」してもらえる。だが、正面から右翼批判の立論に挑み、独自の方法で問題提起を試みた場合は、興味を持ってもらえない。左翼リベラルも右傾化から免れてないのだ。相対的にはリベラル派だが、本質的な思想は脱構築であり、そのため根っこの<反中嫌韓親米>バイアスは同じであり、時代の風潮とコンパチブルで、そこに精神の抵抗はなく、マスコミの立場や論調と変わるところはないのだ。また、そうでなければ、その者の言論は市場(マスコミ・ネット)で一般的支持を集め得ない。日本の右翼化というのは、結局のところ日本人の痴呆化とパラレルな現象なのだと、そう思うようになって20年ほど経つ。そしてこの、政治的には右翼化として現象している痴呆化(ビートたけし化)こそが、この20年間の日本のGDPの伸び悩みを結果させた本質的病根であり、将来のGDPの縮小を促す決定的要因に違いないと、私はそう確信する。単に高齢化という物理的な問題なのではない。大脳の前頭葉が劣化して、知能が薄く小さくなり、思考回路が粗く細く鈍くなり、感情がキレやすく、複雑な思考を持続させて問題を整理解決することができなくなっている点が問題なのだ。

信州大学学長の山沢清人が、「スマホ依存症は知性、個性、独創性にとって毒以外の何物でもありません。スマホの『見慣れた世界』にいると、脳の取り込み情報は低下し、時間が速く過ぎ去ってしまいます」と言ってニュースになった。そのとおりだと思う。教育者としてよい言葉だ。ベネッセの調査レポートによると、高校生(普通科2年)の70%が2時間未満しか勉強しておらず、平均の1日の勉強時間が70分だとある。最もよく勉強するのが中学生(2年)で平均87分で、次が小学生(5年)で平均81分なのだと言う。この数字は信じられない。どうして日本の高校生は勉強しなくて済むのだろう。高校2年といえば、大学受験を控えて最も詰め込まないといけない時期ではないか。いくら「大学全入時代」だと言っても、個々には志望校というものがあるだろうし、それは成績と学力によって無限に偏差値ランクを上に上げられるものだ。理解できない。昔は、翌日の数学と英語の授業で恥をかかないように各1時間の予習は必須だったし、それ以外に課題があったし、国立志望校合格の学力に届くため、ラジオ講座の数学だの、英語の「三位一体」だの、赤本だの、何だかんだと詰め込まないといけなかった。古典(古文漢文)の予習も必要だった。谷村新司が「天才秀才バカシリーズ」をやるのは午前2時前だったから、それまで起きて勉強していたとすると、1日に6時間はやっていたことになる。

週刊ポストの記事を見ると、2010年のデータだが、ハーバードの日本人留学生数は韓国人の8分の1、中国人の7分の1なのだそうだ。OECDによる2010年のPISA(学習達成度調査)ランキングの「読解力」で、上海が1位、韓国が2位、日本は9位とある。2013年のPISAでは成績を上げたが、ゆとり教育の弊害が甚だしいと言われている。少し前、日本の若者は内向きでよくないから、もっと積極的に海外留学をめざせと発破をかけるマスコミ報道が多かった。最近は、あまりこのキャンペーンを聞かない。私の仮説を言えば、意欲やマインドの問題ではなくて、きっと学力と努力の問題なのだろう。首都圏の裕福な家に生まれて、開成なり麻布なりに入り込めば、後は鉄緑とかのカネと技術で東大に押し込んでもらうことはできる。が、そこからはまさに国際環境でのイーブンな勝負だから、よっぽど猛勉強しないと競争相手の韓国や中国の学生には勝てない。それができず、する必要を感じてないのだ。親は官僚や学者やマスコミや大企業の重役で、何もしなくてもコネで親のポストを世襲できる。あくせく猛勉強して中国や韓国の若者と競い合う必要はないのだ。開成や麻布や筑駒や桜陰の子など、所詮その程度のもので、東大もまた世襲第一で世代の再生産に勤しんでいる。日本は平安の貴族社会に戻り、学問する主体が消え、勤勉な学生と教官が消えた。大学教授はタレントと同じ芸能人で、落ちこぼれがTwで遊んでいる。

マルクスの労働価値説に依拠して考えれば、各国のGDP値の現在や将来についても、最終的に、各国民経済の労働生産物の価値総和の実体として捉え、意味了解することができる。労働者の生産する価値は、全世界共通の測定器でフラットに比較され、数値で序列がつけられてしまう。単純化して言えば、勤勉で優秀で能力のある労働者が価値生産すれば、一人当たりのGDP値は大きくなるし、そうでなければ値は小さくなるだろう。日本の一人当たりのGDP値が世界の中でランキングを落とし、5年後には韓国に追い抜かれるのは、基本的にそうした労働者の資質と価値生産力の反映だと考えるのが妥当なのだ。資源のない国で、基軸通貨国でもない国で、普通科の高校2年生が1日に70分しか勉強していないのに、そんな国が先進国水準の生産と消費の経済サイズを持とうというのが、そもそも最初から前提が間違っている。考えが甘すぎる。日本人は劣化を続けている。右翼化は劣化とパラレルな政治の現象形態だ。価値の生産は、謙虚で努力する人間でないとできない。相手を尊重し、敬い、理解し、客観的で合理的な認識をベースにできる人間でないと、設計開発にせよ、製造管理せよ、マーケティングにせよ、クオリティの高い労働と共同をすることはできない。人格は、能力の基礎となるものだ。日本人はそこが劣化し、幼稚化している。

貴族には社会に対する責任感がなく、労働と生産ができない。頽廃と堕落だけ、自愛と攻撃だけだ。



by yoniumuhibi | 2015-04-07 23:30 | Trackback | Comments(0)
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