店頭で販売されている果汁100%ジュースのラベルに「濃縮還元」という表示がされているのをご覧になった方も多いかと思います。これはJAS法の果実飲料品質表示基準および公正競争規約により、濃縮果汁を水で希釈して製造した100%ジュースに表示することが義務付けられています(濃縮した果汁に水を加えて、濃縮前の濃度に戻すことを濃縮還元と言います)。また、ラベル裏面の一括表示の名称の欄にも「○○ジュース(濃縮還元)と表示する必要があります(写真左列参照)。一方、濃縮を行なっていないストレート果汁を原料とした果実ジュースの場合は、一括表示の名称は「○○ジュース(ストレート)」となります(写真右列参照)。なお、蛇足ですが果汁100%未満の果実飲料には「濃縮還元」の表示は不要ですし、野菜と果実を混合した飲料は100%であっても「濃縮還元」の表示は義務付けられていません。

濃縮果汁について
果汁の製造工程において果汁中から水分を取り除いて濃縮したものを濃縮果汁、濃縮しないでそのまま殺菌したものをストレート果汁と呼びます。果汁を濃縮する目的は、水分を取り除いて容量を減少させ、冷凍保管や輸送に要するコストを減少させることにあります。
果汁を濃縮する方法として、広く一般的に行なわれているのは「真空蒸発法」と呼ばれる方法で、減圧した装置内で果汁を加熱して水分を蒸発させる方法です。果汁の濃縮に使用される真空蒸発濃縮機は、短時間で連続的に濃縮が可能で約2〜3分間で濃縮が完了する構造になっていますが、加熱による香味の変化や水分と一緒に果汁の香気成分が揮散するため、濃縮果汁を還元したものは濃縮前の果汁と同じものにはなりません。このようなことから、真空蒸発法で濃縮された濃縮果汁を使用した濃縮還元果汁には、果実から回収された香料を添加するのが一般的です。
これに対して、「凍結濃縮法」や「逆浸透濃縮法」と呼ばれる方法で製造された濃縮果汁を還元した果汁は、濃縮前の果汁とほぼ同じ香味を保っています。「凍結濃縮法」は果汁を氷点下に冷却することにより生じた氷の結晶を取り除くことにより果汁を濃縮する方法で、「逆浸透濃縮法」は水分だけを透過する逆浸透膜を使って果汁中の水分を取り除いて濃縮する方法です。どちらの方法も濃縮中に加熱を伴わず、香気成分の揮散も伴わないため、濃縮前の果汁の成分や香気成分が濃縮果汁中に保たれます。ただ、いずれの濃縮法を用いた濃縮果汁を使用しても「濃縮還元」の表示をしなければならないのが現状です。
濃縮果汁とストレート果汁の特徴
ここまでで、濃縮還元果汁はストレート果汁に比べて劣ったものという印象がありますが、一概にそうとはいえません。
果汁のおいしさを決めるのは、甘味の指標である糖度、酸味の指標である酸度、そのバランス(糖酸比)および香りといわれていますが、ストレート果汁は原料となる果実の品質がそのまま果汁の品質に影響しますので、原料果実を収穫した時期、地域、収穫年度によるばらつきがそのまま果汁の品質に影響を与えます。これに対して濃縮還元果汁は、濃縮により原料果実による品質のばらつきを緩和し、また濃縮還元糖度を一定にすることにより、一定した品質の果汁を提供することが可能になります。
また、これは製造者側のメリットですが、冷凍保管された果汁を解凍して使用する際に、濃縮により溶質濃度が高まりますので、氷点が降下したり微生物が増殖しにくくなることから、濃縮果汁の方が解凍が容易になります。
果実のおいしさをそのままお届けするストレート果汁、品質を均一に保ち、いつも変わらぬおいしさをお届ける濃縮還元果汁、それぞれの特徴をご理解いただいたうえでジュースのおいしさをお楽しみいただければと思います。