印南敦史 - コミュニケーション,スタディ,プレゼン,仕事術,書評 07:30 AM
本番に弱い人ほど効果的! プレゼンが劇的に上達する4つのコツ
効果的なメソッドを知らずに、間違った方向に努力してしまうと、結果が伴わず、苦手意識がますます強くなってしまいます。
たとえば、つっかえないようにと、話す内容を暗記することばかりに気を取られ、どこか1つでもつまずくと頭が真っ白になってしまう...。(「はじめに」より)
すでにこの時点で、大きな間違いを犯している。『人前であがらない37の話し方』(佐藤達郎著、ダイヤモンド社)の著者はそう言い切っています。
コピーライターとして「話すスキルを上げることをゲームのように考え、研究してきた」という著者が、そのメソッドをまとめた書籍。すぐに簡単に使えるように、ビジネスで効果が上がるように、わかりやすく実行しやすくまとめたそうです。
きょうは、第4章「本番で成功するためにやっておくべき12のこと」から、いくつかを引き出してみたいと思います。
相手の情報を強力な武器にする
プレゼンや発表は、相手の反応があってこそ成り立つもの。つまり、どんな相手に対しても完璧なプレゼン・発表などは存在しないということ。ただし、内容の芯は変えないとしても、話し方や伝え方は、相手によってカスタマイズすることが可能。そうすることで、劇的に効果的なプレゼン・発表にすることができるというわけです。そして、その際に役立つのは、相手の情報。相手の情報が、気持ちに響くプレゼン・発表をするための強力な武器になるからです。だからこそ、事前に意識して相手の情報を手に入れることが大切。
初めてプレゼンする顧客であれば、その企業のウェブサイトを熟読するのは基本中の基本。売上、会社の規模、最近の業績、ヒット商品、社長の考え方などを細かく押さえておくことで、説明の際に「この提案は、御社のビジョンで述べられていることにも沿った内容ではないかと考えています」など相手が理解しやすいかたちで話せるということ。
著者はプレゼンでも発表でも、出席する人数、おもな出席者のプロフィールなども必ず事前に聞くようにしているそうです。100人を相手に話す講演でも、どのような職種の何歳くらいの人が多いのかによって、間に混ぜていくエピソードは変わってくるもの。広告業界の人が多ければ業界用語はそのまま使い、少なければ細かく解説をつけるなどによって変化をつけるというわけです。そして最後の仕上げ、本番の少し前にこそ、相手の情報を取れるだけ取ることが大切だといいます。(146ページより)
必要なデータは数字で把握
大きな説得力を生み出す要素が数字。とはいえ必ずしも1の位までの細かい数字である必要はなく、概算でもOK。たとえば「日本の全国民にとって」というよりも、「日本の1億3000万の全国民にとって」と話した方が、イメージはより明確に伝わることに。また「広告ビジネス全体に与える影響も考慮して」というよりも、「年間6兆円規模の広告ビジネス全体に与える影響も考慮して」といった方が現実味を帯びます。
そして自分がよく話題にする領域については、概算の数字でいいのでおぼえてしまうのがオススメだとか。さらには自分の専門に近い部分、その日のプレゼンのキモになる部分について、1の位までの細かい数字を提示するのも効果的だといいます。
×「世界最高峰の国際広告祭カンヌライオンズには、世界中からたくさんの応募作がありまして」
◯「世界最高峰の国際広告祭カンヌライオンズには、2013年は92か国から3万5765点の応募作ありまして」
(151ページより)
というように具体的な数字で示した方が、聞いている人が把握しやすくなり、専門家としての信頼性も増すわけです。しかしその一方、細かい数字ばかり出てくるプレゼンや提案は、話の本筋を見えにくくする恐れも。そこで企画書を見直し、どのデータや数字をどこでうまく使うか思いを巡らせてみることが大切。(150ページより)
準備段階では考え尽くす
プレゼンや発表は、相手や状況に左右される「会話」であり、「やりとり」。準備を固定的なものと考えて、完璧なものをつくり出そうとするとかえってマイナスになるため、準備に力を使いすぎず、その場でのがんばりを大切にすべき。
しかし一方で、「考え尽くす」という準備は、時間の許す限り、力の及ぶ限り、突き詰めるべきだと著者は主張しています。ここでいう準備とは、「本番でもそのとおりに話すための準備」ではなく、「どんな質問や状況にも臨機応変に対応するための準備」。プレゼンや発表の直前には、その提案についてのあらゆることを時間の許す限り考えつくすことが大切だということです。
このときに重要なのは、「こんなことを突っ込まれないだろうか」というようなマイナスの感情から、その対策を考えるという気持ちで臨まないこと。マイナスの感情にフォーカスせず、もう一度まっさらな気持ちで初心に戻り、自分が納得できるまで、自分の頭で考え尽くすべき。そうすることによって自信が持て、「ここまで考え尽くしたのだから、これでミスするのであれば仕方がない」と、プラスのあきらめが持てるようになるといいます。
直前まで考え尽くしておくと、いざというときに強くなれるもの。どんなに鋭い質問が飛んできても、自分なりに消化し、しどろもどろにならず、まっとうな答えを返すことができるそうです。(155ページより)
「慣れないシチュエーション」に慣れる
毎日、慣れきった同じような状況ばかりで暮らしていると、プレゼンや発表の上達は期待できなくて当然。人はアウエイで磨かれるものなので、普段から意識してアウエイに身を置き、慣れないシチュエーションにという状況そのものに慣れておく。そうすることで、プレゼンや発表の思わぬ事態に対応する力が、徐々に確実に上がっていくというわけです。
知人のほとんどいない集まり、自分の専門外のセミナーやカンファレンス、あるいはことばもカルチャーも違う海外など、あらゆるアウエイ状況が、プレゼンや発表の訓練になるのだと著者。あるいは、専門外の、自分のよく知らない本を読んでみることも役に立つといいます。
見たことのないジャンルの映画を見に行く、自分の年代の人が少ないコンサートに行ってみる、男なのに女子会の隅っこに座らせてもらう...。ありとあらゆる慣れないことに意識して触れることは、プレゼンや発表の基礎体力を養うことになるそうです。(159ページより)
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ビジネスパーソンである以上、プレゼンや発表は避けて通れないもの。でも本書の37のメソッドを応用すれば、スキルを上達させることができるかもしれません。
(印南敦史)
- 本番でアタマが真っ白にならないための 人前であがらない37の話し方
- 佐藤 達郎ダイヤモンド社