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徳島空港 誤った着陸許可 当時のやり取り調査
4月6日 19時10分

徳島空港 誤った着陸許可 当時のやり取り調査
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5日、徳島県の徳島空港で滑走路上に車両があるのに海上自衛隊の管制官が誤って着陸許可を出し、旅客機が着陸をやり直したトラブルで、自衛隊によりますと、管制官は滑走路に車両が入ることを許可したおよそ10分後に旅客機に着陸を許可していました。国の運輸安全委員会は管制官から話を聞いて、車両との間でどのようなやり取りがあったかなど詳しい経緯を調べています。
このトラブルは5日午前11時前、羽田発徳島行きの日本航空455便が徳島空港に着陸しようとしたところ、パイロットが滑走路上に車両があるのに気付き、着陸をやり直したものです。乗客と乗員合わせて67人にけが人はいませんでした。
国の運輸安全委員会は事故につながりかねない「重大インシデント」だとして、6日午後、事故調査官2人を徳島空港に派遣し、当時管制業務を行った海上自衛隊徳島教育航空群の自衛隊員から話を聞いています。
海上自衛隊などによりますと、管制官は午前10時40分に滑走路のライトの交換などのため車両が滑走路に入るのを許可し、およそ10分後の午前10時53分に旅客機の着陸を許可したということです。
また、平日は多くの場合、4人の隊員が管制業務に当たっていますが、日曜日の5日は管制官1人しかいなかったということです。
海上自衛隊徳島教育航空群は「きのうは民間機の発着しかなく土日としては通常の態勢だった」としています。
徳島空港は戦後、海上自衛隊が部隊を配備して航空基地として使用していましたが、民間航空の需要が見込まれたことなどから昭和37年に自衛隊と民間の共用空港となりました。その際、空港の管制業務は海上自衛隊がそのまま引き継ぐことになり、現在も海上自衛隊の隊員が管制官を務めているということです。
国の運輸安全委員会は、管制官が滑走路上にいた車両との間でどのようなやり取りをしていたかなど、詳しい経緯を調べています。

当時の経緯は

国土交通省などによりますと、羽田発徳島行きの日本航空455便は、5日午前10時53分、徳島空港までおよそ30キロ、高度600メートルの上空で管制官から着陸許可を受けました。
その後、着陸のために高度を下げ、6分後の午前10時59分、空港の滑走路に東側から進入して着陸しようとしたところ、滑走路上の向かって左端に車両があるのに副操縦士が気付き、機長に伝えました。
機長は急きょ再び着陸をやり直して機体を上昇させましたが、その際、いったん車輪が滑走路に着いたということです。
車両までの距離は、車両に気付いた地点からはおよそ1400メートル、車輪が滑走路に着いた地点からはおよそ800メートルとみられるということです。
日本航空の元機長で航空評論家の小林宏之さんは、管制のミスによるトラブルについて「過去に霧の中の滑走路で航空機が衝突した事故はあるが、天候がよく航空機の少ない空港でこうした事例が起きたのは、記憶している中では初めてだ。間一髪だったが、パイロットの冷静な判断と機転で大事を免れた」と話しています。そのうえで小林さんは、「運航と工事の時間帯は分けるべきで、緊急の工事が必要であれば安全を確保するために滑走路を閉鎖して作業をすべきだ。今後は管制側と工事側の意思疎通や情報共有ができていたかが調査のポイントになる」と指摘しています。

過去の事例は

管制官の指示を巡り事故やトラブルにつながったケースは過去にも起きています。
このうち、およそ40年前の1977年、スペイン領のカナリア諸島にあるテネリフェ島の空港で離陸しようとしたジャンボ機と滑走路上を移動していたジャンボ機が衝突し、航空機事故で史上最も多い583人が死亡した事故では、管制官の指示が適切でなかったことや、霧の影響で視界が悪かったことなどが原因とされています。
また、1991年にロサンゼルス国際空港で旅客機と小型機が衝突して34人が死亡した事故では、管制官が小型機に滑走路への進入を許可したのに続き、旅客機に着陸の許可を出したことが原因の1つとされています。
今回と同じように旅客機と作業用の車両が関わるトラブルも起きていて、平成21年には大阪空港で、滑走路上に点検用の車両があったにもかかわらず管制官から離陸の許可を受けた旅客機が滑走路に進入するトラブルが起きています。

航空事故調査官「さまざまな可能性考慮する必要」

徳島県の徳島空港で着陸しようとした旅客機が、滑走路上に車両があるのに気付き着陸をやり直したトラブルで、国の運輸安全委員会の中城逸郎航空事故調査官は、海上自衛隊徳島教育航空群などで調査をしたあと午後7時すぎに取材に応じ、「着陸許可を出した管制官や上司、それに、滑走路で作業を行った男性などから話を聞いた。内容は公表できないが、こうしたインシデントは1つの原因で起こるものではなく、今回のトラブルにもさまざまな可能性を考慮に入れる必要がある」と述べました。
また、当時、管制業務が1人で行われたことについては、「一般論として管制業務を行う人数は、それぞれの空港の交通量などに応じて決めるのが通常の対応で、1人で管制業務を行ったからといって直ちに不適切だとは言えない」という認識を示しました。

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