AIIB包囲網で日本は孤立の道を歩む?
中国主導のAIIBに50ヵ国以上が参加表明。日本は創設時点での参加を見送った。
実は、日本は水面下で参加するか迷っている国に対して、懐柔工作を行っていた。
その中でも、「比較的経済規模の大きいオーストラリアや韓国に、米国と連携しながら圧力をかけていた」と、財務省関係者は打ち明ける。
ところが、経済規模がはるかに大きいG7の一角で突然、雪崩が起きてしまい、先進国までもがそれにのみ込まれる形で、参加へとかじを切ったのだ。G7の4ヵ国が名を連ねるのであれば、日本が入るよりはるかに体裁も整う。中国としては願ったりかなったりである。
中国に対して、反AIIBの包囲網を敷くつもりが、逆に日米が親AIIB国に包囲されるという屈辱。当然、米政府は同盟国の裏切りに怒りをあらわにした。米国が激怒するのを分かっていてもなお、欧州のG7国が参加を表明するだけの“磁力”がAIIBにはあった。
何よりもまず、AIIBが手掛けることになる、アジアの道路や鉄道などのインフラ需要への足掛かりができるのは大きい。
ADBの試算によれば、2010年から20年までに必要なインフラ整備額は約8兆ドル、実に1000兆円近い空前の規模となる。景気低迷にあえぐ欧州としては、是が非でも取り込みたい巨大需要だった。
富士通総研の柯隆主席研究員は、「AIIBへの参加はリスクが小さい割に、欧州にとって経済的なベネフィットが大きい。一方で、今の日米にそこまでの金は動かせない。4兆ドルもの外貨準備がある中国の“チャイナマネー”は強かったということ」と解説する。
さらに、欧州勢のAIIB参加を決定付けたのが、欧州と中国の間に地政学的なリスクがなかった点だ。つまり、両者の間には領土問題など、「安全保障上の脅威」が存在しないのだ。尖閣諸島を抱える日本と異なり、純粋に経済的な損得勘定で動ける利点が、欧州勢が次々と参加表明した背景に隠されているのだ。
ちなみに「安全保障上の脅威」という地政学的キーワードは、これに限らず、崩壊の危機にひんするEU情勢や、中東の覇権争いなど本特集の複数の場面で登場するので、ぜひ押さえてもらいたい。
今回のAIIB騒動を国際金融の観点から読み解くと、また違った風景が見えてくる。
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中国主導のAIIBに50ヵ国以上が参加表明。日本は創設時点での参加を見送った。