【北京=島田学】中国の習近平国家主席は26日、北京の人民大会堂でインドネシアのジョコ大統領と会談し、インドネシアへのインフラ投資の強化で合意した。ジョコ氏は中国主導で設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)について「設立を通じて国際金融の発展につなげてほしい」と支持を表明した。同国のインフラ整備にも活用する考えを示した。
会談では、首都ジャカルタ―バンドン間の高速鉄道建設に向けた覚書などのインフラ協力、航空宇宙開発協力、海上捜索救助協力など8つの文書に署名した。両国間の貿易総額を2020年までに1500億ドル(約17兆8千億円)まで引き上げる目標でも一致した。
ジョコ氏は会談後の記者会見で、中国人観光客が査証(ビザ)なしでインドネシアを訪問できるようにし、中国人観光客を誘致したいと表明。習氏に、4月下旬にインドネシアで開くアジア・アフリカ会議(バンドン会議)の60周年記念首脳会議への出席を招請した。
ジョコ氏は会談で「中国と緊密に連携していきたい」と強調した。習氏も「海洋や国防、反テロなどの分野の協力もさらに深めたい」と応じた。
中国は今年、対東南アジア諸国連合(ASEAN)外交を強化する。15年末にはASEAN加盟10カ国が1つの経済圏にまとまる「ASEAN経済共同体(AEC)」が創設されるためだ。なかでも人口が約2億5千万人と大国のインドネシアを重視する。同国をテコにASEANへの影響力を強める考えだ。
中国はAIIBを通じ経済力をASEANに浸透させる構え。東南アジアで高速道路や鉄道網を整備し、中国と結べば、経済力で勝る中国がAECをのみ込む形で経済圏を広げることができる。
懸念は中国がフィリピンなどと領有権を争う南シナ海の問題だ。中国は当事国でないインドネシアを取り込み、この件でフィリピンなどと分断して優位に立つ狙いだ。
すでに中国は海洋国家構想を掲げるジョコ政権に対し港湾開発や島しょ間の通信インフラ整備などに400億ドル(約4兆7千億円)の資金提供を表明した。日本とインドネシアの沿岸警備協力をけん制する狙いもある。
一方、ジョコ氏は14年11月に北京で開いたアジア太平洋経済協力会議(APEC)でAIIBへの参加を表明した。ユドヨノ前政権と比べ、中国との関係を強化し、日中双方と等距離外交を進める動きが目立っている。
ジョコ氏が進める経済改革には中国からの投資が欠かせない。ジョコ氏は鉄道や港湾、発電施設などインフラ整備に向け外資を呼び込む狙いだ。15年予算ではインフラ整備に過去最高の約290兆ルピア(約2兆6千億円)を計上。中国からの巨額投資への期待がにじむ。
南シナ海問題でも対中配慮の姿勢を見せる。ジョコ氏は訪中直前、中国国営中央テレビに対し、南シナ海の領有権争いについて「中立的立場で紛争解決に建設的な役割を果たす」と述べた。
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