中学教科書検定:社会科全てに竹島・尖閣…政府見解反映
毎日新聞 2015年04月06日 20時17分(最終更新 04月06日 23時07分)
文部科学省は6日、来春から中学校で使われる教科書の2014年度検定結果を公表した。社会科18点全ての教科書で竹島(島根県)、尖閣諸島(沖縄県)が日本の領土であることを明記。さらに「固有の領土」と表記した教科書は、竹島が18点中14点で現行の1.5倍、尖閣諸島は18点中13点で2.6倍と大幅増となった。北方領土も含めた領土の記述は全教科書に登場し、分量も倍増した。歴史と公民の記述では今回から適用された新検定基準に基づき戦後補償の記述など計6件に検定意見が付き、表記が変更された。領土教育や愛国心教育を重視する安倍政権の意向を強く反映した教科書になった。
教科書検定は小中高校ごとにほぼ4年に1度で、中学は前回が10年度。今回は国語や数学など全9教科で計104点が合格した。このうち社会は計18点(地理4点、歴史8点、公民6点)。歴史分野で誤記の多さなどを理由に2点が不合格になったが、再申請で合格した。
社会に関しては、14年1月に中学・高校の学習指導要領解説が改定され、竹島と尖閣諸島の記述が明記された。現行の教科書では竹島は18点中11点、尖閣諸島は9点だったが、今回はいずれも全18点で記述された。改定された解説には、地理と公民で「『固有の領土』であることを理解させる」と書かれており、地理は全点で「固有の領土」と明記。歴史分野では「固有の領土」の記述を求めていないが、「固有の領土」と書いた教科書は、竹島が8点中5点(現行は1点)、尖閣諸島が8点中4点(同)で、歴史に波及した形。
社会の近現代史を巡っては、同じく14年1月に検定基準が改正され、通説的な見解がない数字を記述する場合はそのことを明示する▽閣議決定など政府の統一的見解がある場合はそれに基づいた記述をする−−ことが必要になった。これに基づき、関東大震災の際に殺害された朝鮮人の犠牲者数など計6件の記述に検定意見が付き、出版社が書き換えたり削除したりした。南京事件を巡る表記も現行から申請段階で変更した教科書があった。
東日本大震災に関しては、中学校教科書としては震災後初の検定だったこともあり、全教科に記述された。東京電力福島第1原発事故に関しては社会科の全18点のうち17点が触れた。【三木陽介】