アフリカ西部のナイジェリアで実施された大統領選挙で、野党のムハンマド・ブハリ氏が現職のジョナサン氏を破った。選挙による政権交代は1999年の民政移行後、初めてとなる。
ナイジェリアは人口、経済規模のいずれでもアフリカ最大の地域大国だ。その安定と成長の持続はアフリカの飛躍に欠かせない。民主的な手続きで政権交代を選んだナイジェリアの人々の決断を国際社会も支えたい。
ナイジェリアではイスラム過激派「ボコ・ハラム」が勢いを増している。シリアやイラクで活動する過激派組織「イスラム国」(IS)とつながりがあるとされ、卑劣なテロを繰り返している。
ナイジェリアはアフリカ有数の産油国だが、原油価格の低迷で経済は打撃を受けている。治安と経済の悪化に手が打てず、汚職と腐敗がまん延するジョナサン政権に国民の不信が広がった。
治安の回復と腐敗一掃を掲げるブハリ氏に期待が集まったのは当然といえよう。
ナイジェリアでは北部にイスラム教徒が、南部にキリスト教徒が多く暮らす。油田は南部に集中し、開発から取り残された北部との経済格差は対立の火種になってきた。ボコ・ハラムに立ち向かうには国民の団結が重要だ。融和に最優先で取り組まねばならない。
ナイジェリアは中東やアフリカに広がるイスラム過激派との戦いの最前線だ。国境を越えて移動する過激派に対処するには、周辺諸国との綿密な連携が大切だ。
ブハリ氏は80年代にクーデターで実権を握った軍政の元トップである。軍政時代のような強権的な手法はもちろん許されない。国際社会はブハリ政権が民主的な統治を逸脱しないように目配りしつつ、支援していくことが重要だ。
安倍晋三首相は2013年に横浜市で開いた「第5回アフリカ開発会議」で、「日本はアフリカとの真のパートナーシップを目指す」と宣言した。その言葉を実行に移さなければならない。