竹島と尖閣諸島の記述

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 「韓国が不法占拠」。

 6日に検定結果が公表された中学校の教科書では、竹島について、社会科の全教科書が取り上げ、地理と公民の10点中9点は日本の政府見解を踏まえ、こう明記した。尖閣諸島についても「日本固有の領土」と強調。見開きで特集する教科書もあるなど“控えめ”だった領土記述が一変した。

 東京書籍は地理、歴史、公民の全てで見開き2ページの領土に関する特集を掲載。竹島や尖閣諸島などについて、日本の領土である根拠と他国の主張の不当性を詳述した。公民では17世紀初めから鳥取藩の漁民が竹島で行った漁業の記録の存在や、韓国の不法占拠を受け、日本が国際司法裁判所に委ね、平和的に解決するという提案を韓国が拒否していることを紹介した。

 編集担当者は「尖閣諸島沖の中国船衝突事件など領土に関する問題を目にする機会が増え、正確な理解には多くの情報が必要と判断した」と説明する。昨年1月の学習指導要領解説書の改定で竹島と尖閣諸島が明記される以前から内容を大幅に増やしていたという。

 現行の公民教科書では、竹島、尖閣諸島とも記述していなかった帝国書院も、見開き2ページで大きく取り上げた。尖閣諸島については日本の領海に頻繁に侵入する中国船の写真も掲載。編集担当者は「解説書の改定に加え、領土問題への関心が高まったため」と話す。

 現行の公民教科書でも竹島や尖閣諸島について詳しく記述している育鵬社はさらに見開き2ページで「領土を取り戻す、守るということ」と題した特集を掲載。尖閣諸島は日本人実業家が開拓し、最盛期には242人が居住していたことなどを紹介。編集担当者は「先祖が島に住んでいた事実を知ることで自分のこととして領土への関心を高めてもらうのが狙い」と話した。

 自由社の歴史も「日本は『尖閣諸島は日本固有の領土であり、領土問題は存在しない」との立場をとっている」と明記した。

 元中学校長で東京学芸大教職大学院の今井文男特命教授は「自国領土の知識なくして学習指導要領にある国家主権の相互尊重はできず、多くの教科書が詳しく書いたことで、不十分だった領土教育は大きく改善される」と評価。その上で「ただ『韓国が不法占拠』などと知識だけを教えるのではなく、経緯や背景、解決しない原因など多角的に考えさせる領土教育が必要だ」と指摘した。