2015年4月5日、NHKスペシャルで「アレルギー」の新しい動きが放送される。Medエッジの最新の記事からも振り返ってみよう。
過剰な免疫を防ぐ「制御性T細胞」
ぜんそく(喘息)や花粉症、食物アレルギーなどアレルギーはありふれた病気だろう。そもそもアレルギーとは、本来ならば体を守るための免疫が過剰になり、自分自身を攻撃することで起こる病気だ。
アレルギーを含めた免疫の研究が進んでおり、予防や治療の常識に変化が起きようとしている。例えば、最近、ほかの分野でも注目されている腸内細菌との関係が指摘されるようになっている。Medエッジでも腸内フローラ、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)という腸内細菌の集まりと病気との関係を取り上げてきた。アレルギーについても伝えてきた。
注目された報告の一つは、赤ちゃんと微生物の関係についての研究報告だ(赤ちゃんは誕生後、微生物にさらすと良い、母乳も含め免疫を強める要因にを参照)。誕生後に、微生物に触れる機会が増えるとアレルギーになりにくいというものだ。その背景にある要因として、体内で免疫を担う細胞の一つである「制御性T細胞(せいぎょせいてぃーさいぼう)、Treg、Tレグ」の役割が指摘されている。アレルギーで起こっている問題である免疫系の攻撃力に働きかけて、過剰にならないようにするというものだ。
幼少期から微生物に触れると、このTレグが増えて、アレルギーになりにくくなるとはっきりしてきた。腸内フローラとアレルギーとの関係につながる発見だ。
フィーカリバクテリウムとTレグ
より直接的に腸内細菌とアレルギーとの関係に迫ろうとする研究も出ている。腸内細菌の状態を調べて、アレルギーを起こす子では腸内細菌の多様性が低いと判明したのも見逃せない(食物アレルギーが出る子と出ない子、その裏には腸内細菌を参照)。
有力科学誌ネイチャーの腸内細菌の特集では、メカニズムを解説している(遺伝子、食物繊維、腸内細菌の3つに意外な関係、腸内フローラの新しい研究を参照)。腸内細菌は腸内の食品を発酵させて、化学物質を副産物として出している。「フィーカリバクテリウム・ プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)」と呼ばれる菌を含めた善玉菌がアレルギーと関係するという報告だ。この腸内細菌は腸内の粘液の層で増殖しており、発酵によって「酪酸エステル」をはじめとする副産物を作っている。酪酸エステルは「短鎖脂肪酸」という短い分子から成る。この酪酸エステルが、Tレグを増やして、アレルギーを防ぐと説明している。
逆にフィーカリバクテリウム・ プラウスニッツィイをはじめ微生物が不在だと、炎症性腸疾患や肥満などの病気になりやすくなる。
腸内細菌とアレルギーに関係
微生物に触れるとアレルギーが抑制されるという関係はアレルギーと生活習慣の関係を調べた研究からも分かった。皿洗いをしている子どもでアレルギーが半減するという報告は興味深い(皿の手洗いで子どものアレルギーほぼ半減、食器洗い機を使うよりも少なくを参照)。
皿洗いをしている子どもは、食器洗い機で皿を洗っている家庭よりもアレルギーが少なくなるというものだ。さらに、発酵食品を食べる量が増えるほどアレルギーが減るほか、農場で直接買ったものを食べる量が増えるほどアレルギーが減ると発見された。
微生物との接点とアレルギーの関係がはっきりしてきている。Tレグを含めた免疫への働きかけの仕組みは今後さらに注目されそうだ。
衝撃の「ピーナッツを食べる予防法」
アレルギーを起こす物質を遠ざけようとするのではなく、あえて触れる機会を増やすというアプローチも注目されている。アレルギーを起こす物質になれると、アレルギーの症状がなくなるという発想だ。
2015年2月、世界的な有力医学誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌で報告されたピーナッツアレルギーの研究結果は世界に衝撃を与えた(「5歳までにピーナッツを食べさせるべし」、アレルギーが激減、有力医学誌で報告を参照)。
幼少期にピーナッツを食べている方がピーナッツアレルギーの可能性が減るというものだ。
従来、アレルギーを避けるためにはむしろアレルギーを起こす食品を控える傾向もあった。全く逆の結果が出たのだ。
ピーナッツアレルギーの有無によらず、ピーナッツアレルギーに対する過敏反応は、ピーナッツを食べていた子どもの方が減ったのだ。その程度は半減を下回るようなインパクトだったのも驚きを与えた。5歳までにピーナッツをできるだけ食べさせるようにすべきだと研究グループは指摘している。これまで良かれと思ってアレルギーを起こす物質を遠ざけていたら、むしろあだになっていた可能性もあるわけだ。
花粉に触れさせる「舌下免疫療法」
ピーナッツアレルギーの研究が予防の話題だとすれば、あえてアレルギーを起こす物質に触れさせるアプローチは、治療の分野でも広がっている。
一つは、花粉症の治療で国内でも浸透しつつある「舌下免疫療法」だ。スギの花粉のエキスを口の中に含ませて、体を花粉にならしていく治療だ。
三重大学のグループが、舌下免疫療法による花粉アレルギーの症状軽減を報告しており、こちらもMedエッジで注目された(スギ花粉症「舌下免疫療法」で予防、国内では今シーズンから保険適用の薬を参照)。2014年10月から、日本国内で保険診療として使える薬剤が登場している。インターロイキン10という過敏反応に関係するタンパク質を増やしており、結果として花粉症の症状を抑制していると見られた。
同じ三重大学の研究では遺伝子レベルで変化を起こすと判明している(スギ花粉症の予防に舌下免疫療法、今季から保険適用、分子レベルで「違い」確認、三重大学を参照)。
あえて食べさせる食物アレルギー治療法
Medエッジでまだ取り上げてはいないが、食物アレルギーの分野でも「特異的経口耐性誘導(SOTI)」と呼ばれる静かに広がっている。
食物アレルギーの分野では、かつてはアレルギーの原因になる食品を除いていく「除去食」が一般的だった。特異的経口耐性誘導は逆にアレルギーの原因になる食品を少量から食べさせていく治療になる。食物アレルギーでは、ときとしてアナフィラキシーショックという呼吸困難にもつながる症状が起こり得るため、慎重な観察の下で進めていく。食べさせる量を少しずつ増やして、最終的に食物アレルギーの克服までつなげていく。アレルギーの治療は、触れさせる治療が注目されている。
免疫の分野はがんの領域も同じだが、日進月歩で新しい発見が続いている。そうした発見の中から全く新しい発想の治療も生まれようとしている。
Medエッジでも継続的に伝えていきたい(Medエッジのアレルギーに関係した記事はこちら)。
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