政府は3日の閣議で安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」を推進するための重要3法案を決定した。農業の競争力強化に向けて農協改革を進めるほか、雇用規制の緩和で働き方を改革する。国家戦略特区では保育所を開設しやすくする。首相が掲げる「岩盤規制の撤廃」のため、今国会で成立させ、成長戦略に弾みをつけたい考えだ。
農協法改正案は、地域農協を束ねてきた全国農業協同組合中央会(JA全中)の監査・指導権をなくすことなどを盛り込んだ。農協の大規模な改革は約60年ぶり。地域農協の経営の自由度や独自性を高め、強い農業への足がかりとする。
政府が改革を急ぐのは日米など12カ国が参加する環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が妥結すれば、海外の農作物との競争激化が想定されるためだ。全国約700の地域農協の経営目的を「農業者の所得の増大」とし、全中は2019年9月末までに一般社団法人に転換する。
労働基準法改正案は働く時間ではなく成果に対して賃金を払う「脱時間給」制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)を新設する。金融ディーラーや研究職など年収1075万円以上の専門職が対象。今国会で成立すれば、16年4月に施行する。企業には有給休暇の消化を義務付け、各社員に年5日分を必ず取らせるようにする。
国家戦略特区法改正案は昨秋の臨時国会で廃案になった後、規制を緩める項目を改めて追加した。
外国人医師は指導医がいれば、地方の小さな診療所でも研修医として働けるようにする。現在は設備や人材の整った大規模な病院に限られる。都市部で深刻な保育所不足に対応し、通常は遊具などしか設置できない都市公園に保育所を設置できるようにする。
政府・与党は3法案を統一地方選後に順次審議入りさせる方針。野党は「アベノミクス」を象徴する法案として論戦にのぞむ。特に労基法改正案は民主党が「残業代ゼロ法案」と批判し、廃案に追い込む構えを示している。菅義偉官房長官は3日の閣議後の記者会見で「今回の法案を速やかに成立させ、民間の活力を喚起することによって成長戦略、地方創生の推進につなげていきたい」と語った。
安倍晋三、アベノミクス