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【社会】

豊洲 観光拠点ピンチ 新市場の「千客万来」 断念検討

2015年4月6日 07時00分

 築地市場(東京都中央区)の後継として都が来年十一月に開場する豊洲新市場(江東区)で、にぎわいを生み出す核として期待される商業・観光施設「千客万来(せんきゃくばんらい)」の整備計画がピンチに陥っている。一部市場業者による計画反対、整備・運営する事業者二社のうち一社の撤退に加え、事業者代表のすしチェーン「すしざんまい」を展開する喜代村(中央区)が本紙の取材に、計画断念も視野に検討していることを明かした。今月中に結論を出すとしている。 (石川修巳)

◆1社撤退 採算不安

 千客万来構想では、一般客が買い物できる場外市場や首都圏最大級の温浴施設などを、喜代村が水産仲卸売場棟の街区に開設。国内外の調理器具市場などを、住宅大手大和ハウス工業(大阪市)が青果棟の街区に設置する計画だった。しかし、都は二月に大和ハウスの辞退を発表し、三月までに予定されていた着工のメドも立っていない。来年十一月の新市場との同時開設は困難になっている。

 都によると、大和ハウス側が車で訪れる利用客らの進入路に想定した都道補助315号線が、業務への支障を懸念する一部青果業者の反対で使えなくなった。大和ハウス側は、これに伴うテナント配置などの見直しで採算が見込めなくなるとして辞退を表明した。

 また喜代村によると、同じ江東区内の都有地にある温浴施設「大江戸温泉物語」に関して、都側と運営会社が結んでいた来年三月までの定期借地権契約が延長されたことも新たに判明。千客万来施設の目玉だった温浴施設の利用客が分散するため、赤字になる懸念が出てきたという。

 千客万来施設には、市場関係者事務所や保育所も計画され、新市場との同時開設を望む声が強い。喜代村の木村清社長は本紙の取材に「不測の事態が続き、前に進めない。断念も視野に入れて早く結論を出さないと、市場関係者に迷惑をかけてしまう」と語った。

◆来年11月開場 続く混迷

 東京都が築地市場の豊洲移転を二〇〇一年に決定してから十四年。かつてガス工場があった新市場用地で土壌汚染が判明、対策工事費に約七百六十億円が投じられ、開場時期も大幅にずれ込んだ。商業・観光施設「千客万来」構想の不透明さが明らかになり、混迷は続いている。

 新市場の開場時期が一六年十一月に正式決定したのは昨年十二月。二〇年五輪に向け、競技会場が集中する臨海部と都心部を結ぶ道路「環状2号」が築地市場内を通る計画のため、五輪までに環2を完成させるには、来年十一月の市場移転がタイムリミットだったとされる。

 市場業者にとっては年末繁忙期直前の移転で、「不慣れな新市場で対応できるのか」との不満がくすぶる。また、土壌汚染対策の効果を確認する地下水モニタリングの結果が完全に判明する前に、工事は進むことになる。

 さらに移転費用が重くのしかかり、築地の水産仲卸でつくる東京魚市場卸協同組合は、百以上の業者が豊洲に移転せず、廃業する可能性があるとの調査結果を発表している。

(東京新聞)

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