一般に、液体が融点で結晶化する時や、飽和溶液から析出するときには
最初に結晶成長の核になるものが必要で、この核になるものが無ければ
結晶成長は何時までもはじまらず、過冷却となります。
さて、結晶の核となるのは、外から加えられた種結晶や、
液体中の固体不純物、液体中に偶然出来た結晶と同じ配列、等です。
このうち、種結晶以外から結晶核が生成する場合はエネルギーが必要で、
このエネルギー(結晶核形成エネルギー)が大きい場合には
それだけ結晶核は生成しにくいため、深い過冷却が観測されます。
この結晶核の形成エネルギーの大きさは、
物質によっても、形成のパターンによっても異なりますが、
一般的に言って、不純物を元にした場合の方が
偶然出来る場合よりはるかに小さくて済みます。
さらに、不純物が元になる場合であっても
物質と不純物の種類によって異なる値となります。
ということで、結論的には、
結晶核生成の元になりやすい不純物が含まれている場合には
過冷却にはなりにくい、といえます。
なお、偶然出来る結晶核の生成エネルギーは物質固有の値なのですが
この部分は今回のような実験では考慮は不要です。
なぜなら、かなり過冷却が深くならないと問題にならない上、
普通に取り扱っている材料では十分な量の不純物が含まれていて
さらに容器も巨大な固体不純物として結晶核となり得るためです。
(このため、上記を測定するには特別な方法が必要です)
ちなみに、上記の内容は金属に限った話ではなく、
例えば水の過冷却にも当てはまります。
最後になりますが、この辺りは基礎の話なので参考資料は沢山あります。
教科書的なものを一冊挙げておきます。
金属凝固学概論
W.C.ワインガード著 / 大野 篤美訳 / ISBN4-8052-0016-2