Think outside the box

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少子化問題と戦争脳

少子化問題の特徴は、fact-basedな議論が困難なことです。特に、リベラル/フェミニストの論者に、事実を否認(denial)する傾向が見られます。

戦争する脳―破局への病理 (平凡社新書)

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ディナイアルは、都合の悪いリアリティに目をつぶること。[…]まずいこと、起きて欲しくないことを全部、そんなことないよと言ったら、全部の戦で負ける。

ディナイアル・オブ・リアリティの上に乗っかった思考の一つが、「ウィッシュフル・シンキング」。定番の日本語訳では「希望的観測」。[…]ウィッシュフル・シンキングというのは、考えることと、それが実現することをゴッチャにする太古的思考を基盤に持つ、一種のノーテンキだ。自分に望ましいことだけを積み重ねていき、都合の悪いことは否認する思考のこと。

リベラル派の論者が否認するリアリティの一つが、「女の労働力人口比率上昇→出生率低下」です。確かに、合計出生率(TFR)は第一次石油危機と男女雇用機会均等法制定のタイミングで低下していますが、女の労働力人口比率は50%前後で小幅な変動にとどまっています。これだけ見れば、「北欧のように女の労働参加を進めれば、出生率が高まる」と主張できないこともありません。

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しかし、年齢階級別では、24歳未満と65歳以上は上昇傾向にあります。

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上昇が最も著しいのが、出産適齢期の25~34歳です。

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全体の労働力人口比率がほぼ一定なのは、

によって、出産・育児と関係する年齢層の労働力人口比率上昇が相殺されているためです。

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同じ「働く」でも、その従業上の地位が大きく変化したことも、出産と無関係ではないでしょう。

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適齢期の女の労働力人口比率の上昇と出生率低下が関係していることはどう見ても明らかなのですが、都合の悪いことを否認する能力の極めて高いリベラル派のノーテンキな論者には、この現実が見えないようです。

このような論者の影響力が強いことが、実りのある少子化対策が議論されない(できない)大きな理由です。

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悪魔的作戦参謀辻政信―稀代の風雲児の罪と罰 (光人社NF文庫)

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State of Denial: Bush at War, Part III

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