その「井戸の中の反目」の代表的な例が国会国政調査が進められている資源外交だ。原油価格と国際鉱物価格が下がっている今こそ資源外交の適期だ。米国・中国・日本をはじめ世界がそのように動いている。ところが、この国では資源外交は不正と同義語になってしまった。先日、イラクのクルド人自治区(KRG)政府が韓国の国会議長や産業部長官あてに抗議の書簡を送ってきたという。韓国の野党国会議員が「韓国石油公社はKRGにわいろを渡し、油田事業権を獲得した」と暴露、これに激怒したためだ。野党が問題視している「わいろ」は、国際慣行として定着しているサイン・ボーナス(契約金)のことだ。この一言で5000億ウォン(約541億円)以上が投じられたクルド油田事業が危機を迎えた。
似たような事例は数多い。このほど与党代表が北朝鮮を「核保有国」と呼ぶ失言をしたところ、野党代表が「利敵発言だ」と問題視した。与野党は北朝鮮の核をめぐってただの一度も頭を突き合わせて話し合ったことがないのに、こんな口げんかはしょっちゅうだ。北朝鮮の核を安保を脅かす実質的脅威と見なしている国際社会は、韓国をどのように見ているのだろうか。朴大統領が「第2の中東ブーム」を強調、若者たちが中東で働くことを推奨した「冗談」もそうだ。大統領や政府がこの問題の現実性をどれだけ検証したのかも疑問だが、だからといって一斉に大統領に向かって「お前が中東へ行けよ」と言い放つのも、やはり極めて韓国な現象と言える。相変わらず自分たち同士で井戸の中でやり合っているのだ。
この井戸の際(きわ)に立ち、外の動向や様子を伝える役割をしなければならない機関の一つが外交部だ。政権の移り変わりで浮き沈みはあったが、それでも外交部は国益という観点からこの役割を遂行しようと努力してきたと信じる。盧武鉉政権で左派の反対を乗り越え、イラク派兵や韓米自由貿易協定(FTA)を妥結に導いたのもこうした努力の成果だ。しかし、外交部長官が政権の「護衛官」になるなら、こうした期待はしまいこむしかない。これこそ真の外交の危機だ。