先月27日、釜山の展示コンベンションセンター、BEXCOで開催された米州開発銀行(IDB)年次総会の会場には、サムスン電子の製品がたくさんあった。主催側に理由を尋ねると、LGからは製品の協賛を受けていないとの答えが返ってきた。LGが後援していない理由は分からないが、IDB総会を重要視していないことだけは分かった。
IDBは中南米・カリブ海諸国の発展を支援する金融機関で、年次総会では中南米の財界人が一堂に会する。通常は中南米の国で開催されるが、今年は10年ぶりに中南米を離れ、韓国で開かれた。韓国企画財政部(省に相当)は総会について「アジアで開催される中南米関連の行事としては過去最大規模になる」と説明していた。
実際に、今回の総会には中南米の経済界の実力者とされるモレノIDB総裁をはじめ、ブラジル、アルゼンチン、コロンビア、ペルー、メキシコなど中南米主要国の経済分野の閣僚・次官、企業家らが出席した。韓国にとっては、めったにない絶好のビジネスチャンスだった。
しかし、韓国の企業はこの重要な機会を生かさなかった。付随行事と総会が開かれた4日間、国内大手企業トップの姿はほとんど見られなかった。数人の中堅企業最高経営責任者(CEO)がフォーラムに参加しただけで、国内の産業界を代表するサムスン電子、LG電子、現代自動車、SKイノベーションなどのCEOやオーナーは釜山に足を運ばなかった。
中南米は台頭する新興経済圏だ。1人当たりの国内総生産(GDP)は新興市場平均の1.9倍に達し、中間層の割合が41%に上る巨大な消費市場でもある。人口の過半数が30歳未満と若く、未来も明るい。内需不振に苦しむ韓国の大企業にとって、中南米は新たなチャンスになり得る。
中国や日本など韓国の競合国は中南米市場の重要性をいち早く見抜き、投資を拡大している。中国の習近平国家主席は今後10年間で中南米に2500億ドル(約30兆円)を直接投資すると宣言しており、日本の安倍晋三首相は昨年7月に大手企業のトップらを引き連れて中南米を歴訪し、資源開発投資を約束した。
韓国政府も、釜山でのIDB総会開催を機に「中南米ブーム」を起こしたいと考えているが、肝心の企業が煮え切らない態度を見せている。ある政府関係者は「今、少し大変だからと中南米でのビジネスチャンスを逃すのは、風邪でつらいからと宝くじの当せん金を受け取りに行かないのと同じだ」と指摘する。
韓国企業は、かつてアフリカなどの新興市場を重視しなかったがために、後になって中国や日本に追いつくため多額を投じることになった。中南米でも同じ失敗を繰り返さないという保障はない。