企業の研修で講師をしている原良恵(はら・よしえ)さんです。
どうしたら受講生の心を捉える授業ができるようになるのか悩んできました。
原良恵さん
「みんなにうまく伝わってないなということがあって、もう少し工夫のしようがあると思いまして。」
人前でいかに魅力的に話をするのか、その方法を探す中、意外なところにそれを教えてくれる講座があると知りました。
ベンチャー企業が大手芸能プロダクションと手を組んで開いているプレゼンテーションの特訓。
生放送なら無料で見られるオンライン講座です。
例えば、聞く人の心をつかむテクニック。
“パソコンも苦手、漢字も苦手、ちゃんと出来ているかどうか不安なんですが…。
自己紹介します、酒胃量太と申します。
…あ、間違いました。”
このように、わざと間違えることで笑いを誘い、話に引き寄せます。
原さんとっては、まさにぴったりの講座でした。
原良恵さん
「前振りがいいことで本当に引き込まれる。
無料で開放してくれ、いいものを見つけた。」
ここ数年、こうしたオンライン講座のサイトが次々に立ち上がり、利用者を伸ばしています。
東大や京大など有名大学の最先端講座が無料で受けられるサイトでは、立ち上がって1年で利用者がおよそ28万人に。
アメリカ人の講師による英会話の授業に…。
さらにはコンビニで買える食材を使った料理教室まで。
生放送なら無料で見られるオンライン講座のサイトの利用者は、およそ15万人になりました。
ビジネスモデルとしても注目を集めています。
生放送の無料オンライン講座を扱うこちらのベンチャー企業では、録画したすべての講座を月980円で提供。
さらに、会員が何をどれくらい学習したのか、そのデータもビジネスに生かせないかと研究しています。
ベンチャー企業 森健志郎社長
「学びたいけど学べなかった課題はもっとたくさんあるんじゃないかと。
そこを解決すればすごい産業になる。
そういうふうに世の中変えていきたいと思う。」
急速に広がる無料オンライン講座。
生活を少しでも良くするために始めた人がいます。
銀行のコールセンターで派遣社員として働くこの男性。
現在の時給は1,500円ですが、一種証券外務員の資格があれば、1,750円に。
月にして4万円の収入アップが見込めるといいます。
“外務員登録原簿に登録された外務員が、外務行為を行うべきでしょ。”
仕事に行く前の3時間、資格専門の無料オンライン講座で勉強をするようになっています。
男性
「学校に通うにしても時間的にも金銭的にもきついので、これだったらできそうかなと思って、少しでも楽な生活ができればいいかなと。」
さまざまなオンライン講座を試す中、意外な形で自分を再発見したという人がいます。
林佑樹(はやし・ゆうき)さんです。
大学卒業後、国家公務員として働いていた林さん。
勤め始めて3年目、仕事は徐々に覚えてきたものの、本当にこれで良かったのか思い悩むようになっていました。
林佑樹さん
「大学時代思い描いていた自分ってこんなんだっけって、振り返る機会多かった。」
そんな中、生放送なら無料で見られるオンライン講座の存在を知った林さん。
ベンチャー企業の作り方を教えてくれるものやマーケティングの講座など、興味がわいたものを片っ端から覗き始めるようになっていました。
その数なんと160以上。
その中の1つが、林さんの人生に大きくかかわることになりました。
林佑樹さん
「この授業は印象的でした。」
「イマドキの大学生は何に悩んでいるか?」。
社会とのかかわりを模索する、林さんの興味をひくタイトルでした。
企業の人事担当者をターゲットにしたもので、今の大学生がどんな悩みを抱えていて、どう接したら良いかを教えてくれるというこの講座。
“やりたいことが見つからないというあなた。
まず、自分ができることが自分のやりたいことであるという幻想をすててもらうこと。”
林さんは、図らずも大学生に向けた講師の訴えに心を動かされました。
今している仕事は「自分にはできるが、やりたいことではない」ということに気付かされたのです。
「やりたいことをみつけて達成していけるようにしていきたい」。
当時、林さんはレポートにこう記していました。
自分がやりたいのは、人の成長を見守る仕事だと気付いた林さん。
去年(2014年)暮れ、公務員の仕事を辞めました。
そして、海外の人たちとも連携してキャリア教育のプログラムを開発をするNPOに転職しました。
今、林さんは新しい職場で生かせないかと、週に1回、無料で英会話を学べるオンライン講座に取り組んでいます。
林佑樹さん
「(オンライン講座は)自分探しの一歩だったと思う。
これからは自分探しじゃなくて、自分自身をしっかり見つめることができたらと思う。」
長い海外生活のため高校にも通えず、ほぼ独学で東大の教授になった、柳川範之(やながわ・のりゆき)さん。
いわば“独学の達人”です。
柳川教授は、無料オンライン講座が広がったために誰でも簡単に独学が出来るようになったと見ています。
東京大学経済学部 柳川範之教授
「三日坊主で終わると、なんか駄目だな、真面目にできなかったと思う。
三日坊主でも、それでも1回やってみると。
まずはやってみる。
とりあえず進んでみるということが大事だとすると、やっぱり手軽に手を出してみて、うまく行かなければまた別のネット情報を手に入れればいいと、それでいいと。
それでもまわしていくことに大きな意義があるんだろうと思う。」
阿部
「ずいぶんと広がって、人生にも影響を与えることがあるんですね。」
和久田
「でも、これだけたくさんの講座が無料というのは意外ですよね。」
赤松
「そうですよね。
例えば大学の無料オンライン講座の場合、参加する大学としては、少子化が進む中で大学に興味をもってもらって優秀な学生を集めたいという思惑があるんですね。
サイトを立ち上げるベンチャー企業にとっても、個人の学習データというのは、使い方によっては宝の山になり得ると考えているんですね。
ただ、勉強する方、種類によっては、勉強を進めていくとお金がかかる講座やサイトがあるので、必要に応じて自分にあったものを見極めてうまく利用するといいと思います。」