・各ユニットの現状
8話から始まったユニット回。それぞれのユニットの長所と弱点が描かれてきました。ユニット内で回り始めたチームワーク。ですがここにきてPが出した全体曲の課題により、再びその弱点が露呈します。
ニュージェネレーションはCD発売イベントでの失敗の挽回を誓います。ですが、空回りする未央を御する事を誰もできていません。未央には次は失敗するわけにはいかないというプレッシャーがあります。3話でプレッシャーにのまれた未央に拍車をかけた凛が動かない事から、ニュージェネレーションはいまだ機能不全であるようです。
ソロでデビューした蘭子。自らの思い描くヴィジョンそのままにデビューできたのはよかったのですが、ここにきて「ほかのアイドルと一緒にステージに上がったことがない」事が徒となり蘭子を苦しめます。良かったはずの事がことが裏返って徒になってしまう、アニデレ世界観の現れです。
テレビ収録時の危機をチームワークで乗り切ったCandy Island。ですが身体能力の低さは克服されていません。杏の指摘は全うなものですが、智恵里を励まさなければならないかな子もダンスには自信が持てず、背を向けてしまいます。
全体曲に一番喜んでいたのは凸レーションでした。ですが乗る気でない周囲の反応に、きらりが凹んでしまいます。まるで自分が楽しい事がいけない事かのように、周囲の空気を過敏によんでしまうきらり。10話で見せた彼女の一面もまた解決されていません。
ようやくデビューを果たしたアスタリスク。例によって些細なことでぶつかり合う二人ですが、この衝突さえコミュニケーションと考えればみくと李衣菜の意思疎通には心配がないように思います。そんな二人が共通して不安視しているのは場数の少なさ。11話のイベント以降、まだステージの仕事はほとんどない様子です。
ユニットが内包する弱点は、ユニット内のチームワークで補われています。が、ユニット内では回っているチームワークも、ユニット間では全く機能しないどころか衝突の原因となってしまいます。
倒れ込むCuアイドル達。NGの中では卯月はダンスを苦手としています。Candy Islandは体力も保たない様子。
卯月を励ます未央。卯月は3話、6話でも描写されたように出来なければ出来るまで練習する性分です。なので未央の励ましは卯月には有効に作用します。
ですが未央の叱咤激励はCandy Islandの智絵里には萎縮させるものでしかありません。
未央のニュージェネレーションでのやり方を杏は拒みます。いつものどこかおどけた口調で無く、効率主義者の現実的な分析です。C.I.にはC.I.のやり方がある。が、杏には対案は示せません。
・新田さんのしたこと
新田さんは既に各ユニットの現状を把握しています。問題はダンス以前にあると杏と同じ判断をしたうえで、杏の示せなかった対案を示します。それはミニ運動会という形で、各ユニットの現状を可視化、共有すること。
これを思いついたのは、新田さんが大学でラクロスをしていることとも無縁で無いように思えます。体育会系の集団競技。もう時間が無いんですと焦る未央に対しては、「リーダーは私」とバッサリ。どうしてと理由を問う凜にも、「やればわかる」と自信ありげに答えます。
で、最初のリレーでいきなりユニット内の機能不全が露呈するニュージェネレーション。やはり未央と凜の間にはまだ齟齬があるようです。
飴食い競争はCandy Islandの為に準備されたような競技でしたが、C.I.の絶対的身体能力は低く、プロジェクト内でもトップであろう身体能力を誇る未央に抜きされられてしまいます。
本編からはそれますが、スタンド使いが引かれ合うように、かな子とお菓子は引かれ合ってしまうのであって、かな子が特別意志が弱いとかそういう事で無いのはこの飴食い競争の描写で明らかです。ましてトリュフ豚などという聞くに堪えない中傷に対しては君が泣くまで殴るのをやめません。
リレーに負けた時の新田さんの指のサインにお返しするような、未央の表情。勝負に固執するあまり、顔が粉だらけの事にさえ気づいていません。
誰かと一緒にステージに立ったことのない蘭子は転んでしまいます。ですが立ち上がるのに苦労する3人を見て、未央と凜もようやくこの運動会がチームワークを確立するために行われているのだと気づきます。
新田さんのだした指のサインは、未央達への煽りではなく「3人のチームワーク」を意味するものだったのですね。
アスタリスクには運動会のMCを割り振りました。彼女達の唯一と思われるステージの仕事を褒めて自信をつけさせる狙いでしょう。また、アスタリスクにはニュージェネレーションのようなチームワークに対する懸念はありません。デビューまでに重ねた経験がここでは生きています。悪かったことはひっくり返せる、アニデレ世界観の現れです。
・一つになった事
蘭子は心を一つにすると言いました。この後新田さん自身が「不安を半分こできた」と語ります。
恐らくラブライカはCP内で一番うまく回っているユニットです。デビューも早く、気負いも無く、身体能力にも不安はありません。そしてどうやら仕事も忙しいのか、同時デビューした筈のNG組を尻目にCDへのサインも描写されています。
ですが何よりこのユニットを強固にしているのは、2人が「不安を共有」しているからと思います。新田さんは言葉の壁に不安を覚えているアナスタシアを知っています。アナスタシアはステージに不安を感じていた新田さんを知っています。お互いの弱さを知っているからこそ、お互いのために強くなれる。そうしてラブライカは不安を乗り越えてきたのだろうと。洗面所で己の手を見た時に思い出したのは、不安になるたびに手を握ってくれた、アナスタシアの温もりだったのかもしれません。
なんの根拠もないのですが、この言葉はきらりにも送られたものだと感じます。共有するのは楽しい事だけじゃない。不安を共有したっていいんだと。10話で示されたように、凸レーションは既に、弱さをさらけ出してもそれを良い方にひっくり返せるのですから。
その上で、新田さんは「冒険」というキーワードを提示します。不安を乗り越えた先にあった景色はドキドキできるものだったと彼女は語ります。すでにデビューを果たしているメンバーはその「景色」を知っています。PVを作れた蘭子。テレビに出演できたC.I.。ゲリラライブを果たせた凸レーション。CDデビューをもぎ取ったアスタリスク。そしてニュージェネレーションは、美嘉のライブで見た景色を知っています。なら、14人全員で乗り越えた先にある景色には何があるだろう。メンバーにその先を想像させた事は、意志の統一に繋がりました。
以上、心を一つにとは、具体的には「不安」と「景色」の共有という事だろうと思います。みんなの反応に一息遅れた凜も、新しい景色をみる事でしょう。私もどんな景色がみれるのか今から楽しみです。それがどんな結果に裏返るかもしれないとしても。
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