スズメの1年は、春〜夏の『子育て期』と秋〜冬の『子育てしない期』にハッキリ二分されます。春が来たら即、子育てモード! なぜなら栄養たっぷりの昆虫たちが、(啓蟄で)もぞもぞと出てくるからなのですね。
雄たちは、2月くらいから本気の婚活に入ります。自分のDNAを残すため、巣作りの場所やお嫁さんを巡り転げ回るケンカも厭いません。しかも、通りかかる雌には片っ端からプロポーズ! 一方雌たちは、声・ルックス・財産(新居物件とかですね)をクールに検討して返答するようです。婚活と平行して行われる巣作りの材料は、枯れた雑草の茎や葉など。卵を並べる産座には、ソフトな鳥の羽根や獣の毛も使います。ブロック塀・排水管・看板・信号機・・・穴さえあれば「ベランダに干したパンツでも可」というくらい、人工物のちょっとした隙間に愛の巣を作ります。
少し意外なのは、巣が家族の生活の場ではなく、あくまでもベビールームだということ。産まれたばかりのヒナの体調が安定すると、ママも近くの木など別室で寝るのです。巣立てば二度と戻りませんが、次の子育てに再利用されることはあるようです。
卵は24時間絶えず温めなくてはなりません。夫婦の協力体制が不可欠なので、鳥類の約90パーセントが一夫一妻制です。夫が妻の食事を運ぶ鳥もいますが、スズメの場合は日中パパが抱卵を交代します。産むのはママですが、哺乳類と違って授乳しない鳥類は、両親が同等に育児可能なのです。
卵は1日1個、合計で4〜6卵産みます。 同時に孵るよう全て産み終わってから温め始めますが、 なぜか最後に産んだ卵だけ色が薄くて『止め卵』と呼ばれているそうです。もう温めていいよ〜という合図でしょうか。約2週間で卵が孵ると、両親は毎日せっせとエサ運び! タンパク源の昆虫をメインに、そこで入手できる植物(とくに種子など)で育てます。産まれてから2週間で体重が10倍くらいになるヒナたち。養う親鳥は、小さな体でどんなに大量の食物を運ぶことでしょう。
それから2〜3週間、いよいよ巣立ちです。子スズメは、親がエサを運んでくれなくなるのでしかたなく巣を出ます。それでもまだしばらくは、近くで親に面倒をみてもらいながら「路上教習」・・・私たちの目に触れやすいのは、この頃なんですね。
子スズメの羽根は薄い茶色で、体も締まる前でポワ〜ンと大きく、やつれた親がなお小さく見えます。エサのとり方・飛び方・水浴び。ポテポテ歩きうずくまったりするので、いつ天敵に襲われるかと見ていてハラハラします。お腹が空くと、羽根を震わせて「ごはん!ごはん!」と甘えて鳴きます。その口に親は何度もエサを入れてやり、1週間ほどして少したくましくなった頃、次の子育てに入るのです。 8月末頃までに2〜3回、子育てするそうです。