経済の死角

14億人のトップ習近平の栄光と孤独 謀殺に脅える「異常な警戒心」 初めて明かされる素顔(下)

2015年04月05日(日)
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photo Gety Images

みんなが恐れ、ひれ伏す

この代表によれば、いまや全国の富裕層の人々も、習近平に脅える日々だという。

「3月2日に米『フォーブス』誌が発表した中国長者番付トップの『不 動産王』王健林は、身の危険を感じて、習近平のたった二つの趣味であるサッカーとハリウッド映画に目をつけた。1月に昨季スペインリーグの覇者アトレチ コ・マドリードの株の2割を買ってオーナーになり、夏にスター選手たちを北京で習近平に引き合わせると約束。また青島に『中国版ハリウッド』を建設すると ブチ上げ、再来年のオープンに向けて工事を始めています。逆に習近平の嫌いなゴルフへは、誰も投資しなくなりました」

3月5日、全人代の開幕式に参加し、李克強首相の政府活動報告を聞いた習近平主席は、午後になると、上海市代表団の分科会に加わった。31の地方が それぞれ別の部屋で分科会を開いたが、習近平主席は昨年、一昨年に続き、3年連続で迷わず、上海市の指導者たちが一堂に会する部屋に向かったのだった。

前出の李大音氏が解説する。

「習近平は2年前に国家主席に就いた時から、中国政界最大の黒幕、江沢民元主席と、その一派『上海閥』を打倒することに闘志を燃やしてきました。そのため、敵の〝本丸〟に乗り込んで、『江沢民の上海』から『習近平の上海』に塗り替えているのです」

この日の習近平主席は、上海市の幹部たちを前に演説をぶち、「刷新」という言葉を繰り返した。

「旧い時代(江沢民時代)の意識は捨て、すべてを刷新するのだ。刷新する者だけが勝者になると思え。上海は、刷新して発展する先行者となり、全国の刷新を助けるのだ!」

習近平主席の演説が終わると、その迫力に圧倒されたかのように、上海で「江沢民一家の御用聞き」というニックネームがついた楊雄市長が、必死にお追 従を述べた。続いて同じく「江沢民の犬」と言われた上海市トップの韓正・上海市党委書記が、汗をかきかき習近平主席の偉大さを称賛したのだった。

「この上海市最高幹部二人は、昨年の大晦日に、上海最大の観光名所バンド(外灘)で起こった将棋倒し事故(36人死亡)の責任を取らせる形で、クビになるはずでした。ところが習近平主席が『待った』をかけて、首の皮一枚で延命した。

習主席は、この二人にもっと重大な汚職のレッテルを貼って監獄にブチ込もうと考えているのです。それは本人たちも薄々感じ取っているため、二人とも、いわば命がけで習主席への阿諛追従に及んだというわけです」(同・李氏)

あまりに寂しい

習近平が顔を出したのは、上海市の会議ばかりではなかった。

3月12日、習近平主席は、人民解放軍代表団の全体会議にやって来た。軍の最高幹部たちは、緊張の面持ちで習近平主席の演説を聞いた。

「これからは、軍人と人民を一体化していく。軍人と人民が強大なパワーを結集させ、中国の夢、強軍の夢を実現するのだ!」

再び李大音氏が語る。

「江沢民時代の軍における2大実力者が、徐才厚と郭伯雄の両元中央軍 事委員会副主席(上将)でした。習近平主席はまず、昨年3月に徐才厚を失脚させましたが、この会議の時、ついに監獄で殺害したという噂が流れたのです(国 営新華社通信は15日に、多臓器不全で死去と発表)。

もう一方の郭伯雄に関しては、3月2日、まずは息子の郭正鋼・浙江省 軍区副政治委員(少将・45歳)を、『重大な犯罪容疑』で失脚させました。遠からず郭伯雄本人も、監獄にブチ込むのは必至です。他にも江沢民派の軍幹部た ちを一網打尽にしつつあり、『習近平の軍隊』建設に邁進しているのです」

だが、どれだけ政敵を粛清しても習近平が満たされることはないだろう。李氏が続ける。

「習近平が信頼できるのは、青年時代から親しかった王岐山常務委員と栗戦書・党中央弁公庁主任(官房長官に相当)、それに妻で元国民的歌手の彭麗媛くらい。これほど孤独な独裁者はいません」

習近平と王岐山は共に、青年時代に同じ陝西省の貧困地区に行かされた際に知り合った。王岐山がそこで知り合った姚依林副首相の娘と結婚したことから、同じく副首相の息子だった習近平と、北京へ戻ってからも親交を深めた。

栗戦書は、習近平が30代前半の時に河北省で務めた際に知り合い、意気投合した。以後、自分の政治生命を習近平に賭けた唯一の政治家となった。

「いま習近平の周囲にいる他の面々は、権力の前にひれ伏しているだけです。だからいつ部下に寝首を掻かれるかしれないため、習近平は粛清を強める。すると部下たちはますます離れていくという悪循環です」(李氏)

14億の民を率いているのに、本当に信頼できる部下は、たった二人だけ。謀殺に異常なまでの警戒心を持つ独裁者・習近平の内面は、あの大国以上に不安定なのである。

「週刊現代」2015年4月4日号より


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