NNNドキュメント

番組詳細説明（表題）

“復興”祝い酒　
〜兄弟が醸した「希望」〜

番組詳細説明（内容）

【内容】
東日本大震災の津波で酒蔵を流され、放射能からも逃れて隣県で再起を図る兄弟がいる。やがて二人の方向性に食い違いが出始める。福島での事業再開にこだわり、古里に戻って復興を目指す兄。現実を見つめて第２の古里に定着して自立を目指す弟。２０１４年のお盆、方向性をめぐって二人は思いを激しくぶつけ合う…。
２０１５年３月１日、震災で工事が中断していた浪江と富岡を結ぶ常磐道が開通の日を迎える。記念品として贈られるのが「希望」と名付けられた酒。震災後初めて収穫された浪江町のコメで、兄弟が醸した酒だ。二人はこの酒にどんな思いを込めたのか？　　二人にとっての「復興」とは？兄弟の４年に密着した。


　福島県浪江町請戸の鈴木酒造店が造る「磐城寿」は、漁師が大漁を祝う酒として江戸時代から地元で親しまれてきた。大震災で建屋のすべてを流出。地区は警戒　区域に指定され、家は山形県に避難した。
２０１１年９月、鈴木酒造店は、専務で杜氏の大介さん（４１）と弟の荘司さん（３８）を中心に、後継者がいなくなった山形県長井市の酒蔵を引き継ぎ、奇跡的に残った酵母で「磐城寿」の醸造を始める。避難者一人月１０万円という賠償金はあるが、福島県外での事業再開に復興助成はない。リフォームや新しい器具の購入など、約１億円の借金を抱えての再スタートだった。
一歩一歩、復興への歩みを進めるが、いつしか兄弟の気持ちにずれが生じ始める。
兄・大介さんの目標は、浪江で酒造りを再開すること。２０１３年秋、中学校の同窓会で浪江への熱い思いを口にする。その一歩として、震災後初めて２０１４年春に浪江町内で作付されたコメで酒を仕込もうと考えた。「その酒がバラバラになった人たちの心を 結びつける」と思っている。
一方、弟・荘司さんは浪江での事業再開に反対だ。長井への永住を決め、２０１４年１月、新居を構えた。２月には第２子が誕生し、新居に一家が集まる。祝い酒・磐城寿で乾杯した兄弟だが、家族や親せきが集まったお盆、お互いの思いをぶつけ合う。
荘司さんは震災直後、福島県内に残るべきだと強く訴えていた経緯がある。この時、大介さんは「どこであれ酒造りの再開が最優先だ」と弟を説得した。いま、兄は「復興」を前面に掲げて活動を続けるが、弟は、「いつまでも被災者でいてはだめだ」と言葉を荒げる。荘司さんはお盆休みが明けても酒蔵に顔を出さなくなった。
２０１４年秋、浪江のコメが収穫期を迎え、農家は、「復興は誰かにしてもらうものじゃない。自分たちでつかむもの」と期待をかける。検査の結果、放射性物質は国の基準を下回った。浪江町の依頼を受け、大介さんはこのコメを使って酒を造ることを決める。社長の父は風評被害を心配し反対したが、粘り強く説得した。
お盆から２か月後、荘司さんが酒蔵に戻ってきた。大雨で被害をうけた兵庫県にボランティアに行っていたという。その中には修業時代に勤めていた酒蔵も。酒造りへの思いを新たにし、再出発を決めた。荘司さんも浪江のコメでの酒造りには異論はない。
２０１５年１月、浪江のコメを使った酒造りが始まった。二人は、どんな酒に仕上げ、どんな思いでその酒を口にするのか？そして、浪江の人たちは？
古里の復興を願い「希望」と名付けられた酒。
震災から４年、“浪江の祝い酒”は福島を元気づけられるだろうか。