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徹底解剖「原発を止める男」小泉進次郎の血脈、決意、戦略

2月28日、進次郎氏はNHKの朝ドラ「あまちゃん」の舞台となったことで知られる岩手県立種市高校を訪問。体育館では翌日に卒業式を控えた全校生徒が待っており、ピースで記念撮影を行った
「『いつもお世話になっています』と丁寧に挨拶していったのには驚きました。秘書が代理で挨拶に来るケースはありますが、議員が来るのは稀です」
1月中旬、自民党本部9階で開かれた、党職員による新年会。裏方の職員だけのこの会に、小泉進次郎(33)がフラリとやってきた。同党幹部職員はその姿を目にして、舌を巻いたという。
「来たのはちょうど開始1時間前。それより遅いと迷惑で、早いと誰もいない。絶妙のタイミングでした。あそこまでやれる二世議員は見たことがない」
当選3期目の進次郎は今、内閣府大臣政務官と復興大臣政務官を兼務する。「メディア受けするだけで、政治的な実績がない」と言われてきた彼に、変化の兆しが現れていると、多くの関係者が指摘する。その一つが、「ふたば未来学園」だ。
4月8日、福島県双葉郡広野町に中高一貫校の福島県立ふたば未来学園が開校する。この学校は進次郎が構想段階から主導的にかかわり、自ら講師も務める予定だ。進次郎肝いりの事業が、次々にスタートする。
「今年度から、国家公務員や民間シンクタンクなどの人材を各自治体に副市長として派遣する制度が開始されますが、これは進次郎の発案。また地元を通る有料道路『横浜横須賀道路』の料金が来年4月から値下げされるが、彼が菅義偉官房長官に働きかけた」(全国紙政治部記者)
「客寄せパンダ」を卒業し、大人の政治家へ変貌しつつあるようだ。
「最近、進次郎は『地元の陳情をこなす秘書はどうやって育てればいいのか』と知人に相談もしています。地元の横須賀や三浦からの陳情を、十分にこなせる事務所の体制づくりを考えているんです」(ノンフィクションライター・常井健一氏)
自らの政治的主張も、語り始めた。昨年夏には福島県会津若松市で講演し、安倍政権の原発再稼働について、
「はたしてもう一度、同じような事故を起こさないと自信を持って言えるか」
「本当にあの事故から学んでいるかと思うことがいっぱいある」
と疑問を呈した。党内に強力な統制を効かせる安倍政権を公然と批判できる自民党議員はごくわずかだ。
政治家・進次郎は、その知名度のわりに人物像が知られていない。
進次郎は小学校から大学まで関東学院で過ごした野球少年で、高校時代は神奈川大会ベスト8まで進んだ。
「高校時代は野球部の練習に明け暮れて、授業中は体力を回復させるという毎日。家庭教師をつけていたが、得意の英語以外はなんとか赤点を免れるレベルでした。野球部のマネージャーと3年間交際していましたし、勉強するヒマはなかったでしょうね」(高校の同級生)
大学では野球部に所属せず、しかも卒業後はしばらく定職に就かず、家でブラブラしていた。政治を志すきっかけは、名門・コロンビア大学の芸術科学大学院政治学科に留学したことだ。
「授業後は図書館に直行。英語は上手かった。発音はともかく、英語でも日本語を話すのと変わらない雰囲気や間で言いたいことを伝える力がある。米国の難関大学院を卒業できたのだから、地頭はいいんでしょう」(大学院の同級生)
卒業後は米国の大手シンクタンク、戦略国際問題研究所に勤務。全文英語で『米印原子力協定で試される積極外交』などの日米外交関連の論文を書いている。
劣等生だった彼がわずか3年後に英語論文を書き上げているのは驚きだ。
帰国後、父親の私設秘書を経て、’09年の総選挙で28歳にして初当選。次世代のリーダー候補として注目を浴びている。
2月下旬、進次郎の岩手県視察に本誌は同行取材した。進次郎は新幹線の車内でもスキがない。シートで足を組みながら、新聞各紙を余念なくチェック。
県立高校の生徒7名との意見交換会では、「今度、県庁に勤めるんだよね」と話しかけて相手の緊張を解く。事前に生徒のプロフィールを完全に把握していた。
冬の市場を訪れると、次々サインを書いて、「(色紙は)なんぼになるべや?」「鑑定団に出してもダメだよ」と丁々発止のやりとり。高齢の女性との記念撮影ではさりげなく腰に手を回す。もちろん相手が若い女性のときは決してしない。
その一方でプライベートは徹底して秘密主義だ。進次郎の携帯番号を知っている議員や党職員はほとんどおらず、酒席をともにする者もごくわずか。進次郎の国会事務所はFAX番号もメールアドレスも公開せず、マスコミからのいかなる問い合わせも受け付けていない。
進次郎が会うのは、政界とかかわりのない文化人ばかりだ。
グロービス経営大学院学長の堀義人と元民主党参議院議員・慶應大学教授の松井孝治をハブとして、ベンチャー企業やNPO団体の代表、若手文化人や学者ら(下図参照)。彼らが進次郎の私生活をマスコミに話すこともほとんどない。
そういった会合を通じてハーフの美人ヘアメイクアップアーティストと親しくなり、シティホテルや赤坂の議員宿舎で密会したという情報もある。本誌は3月中旬、進次郎に直撃し、ハーフ美女との密会について問い質した。いつもはよどみなく話す進次郎だが、このときは、
「いろんな方と、僕は個別にお会いすることはあります」
とだけ答えて質問を打ち切った。
進次郎には二面性があるようだ。愛想よくふるまう政治家としての顔と、決して明かさない謎だらけのプライベート。二つの顔を使い分けることで、日本中から視線を浴びる重圧を避け、バランスをとっているのかもしれない。
進次郎首相の基本政策
安倍晋三首相(60)も進次郎には一目置いている。
「地方行脚を買って出ている進次郎について、『やりたいようにやらせておけばいい。下手に政局に口出しされたら、世論はぜんぶ進次郎に持っていかれる』と嘆息していた」(自民党閣僚経験者)
政界の重鎮も、進次郎を高く評価する。
「石破茂・地方創生相は『(進次郎を)いつか総理にしたい』と公言し、大島理森・衆院予算委員長も後見人の一人で、よく電話で話している。大島は復興加速化本部長を兼務していますから、『あの事業の予算を増やしていただけませんか』と進次郎が頼むと、『よし、わかった』で、コトが運んでいきます」(自民党職員)
ジャーナリスト・鈴木哲夫氏は言う。
「全国各地の青年党員も支持層です。彼らはみな進次郎のファンであると同時に各県連の幹部候補生。おそらく進次郎が総裁選に出る頃には各県連の幹事長などの要職を担う。地方票は『小泉進次郎』でまとまることになるわけです」
すでに、「進次郎首相」へのレールは敷かれていると言ってよさそうだ。目指すのは単なる総理ではない。新しい価値観を実現するリーダーだ。
「最近、彼が興味を持っている一つが日本の軽自動車。『制約の中で快適な空間を作る、あれこそ日本のイノベーションだ』と絶賛しています。彼が目指す日本社会の未来像なのでしょう。高齢化と人口減少、財政赤字を抱えるなかで、どう心地いい暮らしを実現させていくかを考えている」(前出・常井氏)
恐らく、そのための大きな一歩が原発の「永久完全廃止」なのだろう。
進次郎はサインを求められると「有志有道」と書く。「意志あるところに道はあるということ」と説明する進次郎に、本誌が「その道はどこに続くのか」と尋ねると、沈思した後、こう答えた。
「前へ、前へ」

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