岡山大病院:脳死・生体両肺移植に成功 世界初
毎日新聞 2015年04月04日 21時54分(最終更新 04月05日 00時53分)
岡山大病院は4日、肺移植を待っていた男性患者(59)=北海道在住=の両肺を摘出し、脳死ドナーからは左肺を、生体ドナーからは右肺の一部を、同時に移植する「ハイブリッド肺移植」手術に世界で初めて成功した。日本臓器移植ネットワークの規定で、55歳以上60歳未満の人には脳死ドナーからは片肺しか提供できない。もう片方を生体ドナーから提供してもらうことで、両肺の呼吸機能が十分に確保できたという。
記者会見した大藤剛宏・岡山大病院臓器移植医療センター長は「脳死肺移植と生体肺移植の欠点を補う手術。55歳以上の方でも両肺移植が可能になることで幅が広がり、臓器移植の待機期間も短縮される」と話した。
岡山大病院によると、患者の男性は2008年に特発性間質性肺炎を発症。当初は男性の息子2人(成人)から一つずつ下葉(肺の下部分)の提供を受け、両肺への移植を検討した。しかし、男性の体格が大きく、移植しても肺の容量が足りないと判断した。脳死肺なら片肺全体の提供を受けられるため、生体、脳死の両ドナーから提供を受ける手法を検討。今年3月27日に日本臓器移植ネットワークに登録し、脳死肺から摘出した左肺を左側に、患者の息子の右肺の下葉を右側に移植した。
あっせんされた脳死肺は医学的に状態が悪かったが、生体ドナーから健康な肺の一部を移植したことで、十分な呼吸機能を確保できたという。
岡山大病院によると、患者への移植手術は約20人のチームが約10時間かけて実施した。男性の容体は安定しており、入院は約3カ月の予定。男性は病院を通じて「これから何年も待つのは体力的に厳しく、もうだめかと思っていた。脳死ドナーやその家族、生体肺を提供してくれる息子には感謝の気持ちでいっぱい」などとするコメントを出した。【原田悠自、五十嵐朋子】