相次ぐ事故などで経営陣が刷新され丸1年の北海道旅客鉄道(JR北海道)で、安全問題が再燃している。本州と北海道を唯一鉄路で結ぶ青函トンネル内で3日、特急列車から火花や煙が出る事故を起こし、トンネル開通後初めて乗客を避難させる事態となった。2016年3月の北海道新幹線開業を控え、新たな課題が浮上している。
過電流が原因とされる今回の事故では、車両メンテナンスが改めて問題視され、非常時の避難誘導についての想定の甘さも露呈した。3日に特急「スーパー白鳥34号」が緊急停止した後、深さ約135メートルの旧竜飛海底駅からケーブルカーで乗客124人を避難させるのに約6時間を要した。
4日に記者会見した西野史尚副社長は「避難誘導のマニュアルに基づいて行動した」と説明する。ただ、新幹線の「H5系」は定員731人。定員約20人で1往復に約30分かかるケーブルカーでの全員脱出には、単純計算では18時間もかかる。
JR北海道は安全対策の徹底とともに、青函トンネルでの避難誘導策の改善を急ぐ。反対側の線路に別の列車を回して乗客を運ぶことも検討するが、レールが損傷した場合には利用できない。
同社では11年に石勝線トンネル内で脱線火災を起こした後も、出火事故やレールの異常放置など安全にかかわる問題が頻発している。14年4月に就任した島田修社長が安全再生の改革に取り組むが、不安を解消できていないのが実情。青函トンネル内での安全確保は新幹線開業に向け大きなハードルとなりそうだ。
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