松井先生のクランお悩み相談室:第10回「抜けたクランの人たちと鉢合わせしてしまったら……」

松井先生のクランお悩み相談室:第10回「抜けたクランの人たちと鉢合わせしてしまったら……」
オンラインゲームにおけるクラン運営に関連するさまざまな悩みに答えていく「松井先生のクランお悩み相談室」。
World Cyber Games日本予選プロデュースをはじめ、様々なe-sportsイベントに携わり、自身もオンラインゲームのクランを運営している株式会社グルーブシンクの松井悠が皆さんのご相談にお答えしていきます。第10回目は抜けたクランの人たちと鉢合わせしてしまった、あるプレイヤーさんからの相談です。

所属していたクランからの脱退、そして……

今回はPePPerさんからの相談です。所属していたクランを脱退したのちも、そのゲームをプレイし続けることはままあることですし、そこで、前のクランメンバーとばったり出会った、なんてこともよくあることですね。ですが、今回はちょっと事情が違うようです……。

まず、クラン脱退の件は、クランリーダーとの意思の疎通がしっかりとできていなかった、というところから見れば、クランリーダー、クランメンバー、そしてPePPerさんそれぞれに問題があります。クランリーダーは、クラン加入の際に、どういった形で練習を行っているのかを伝えるべきでしょうし、メンバーは、怒られていたPePPerさんをフォローするべきでした。PePPerさんは、黙って抜けるのではなく、改善を申し入れたり、自分にかかっているストレスをきっちりと伝えるべきでしたね。もちろん、もう終わってしまったことは仕方がありませんから、この次の機会に活かすことができればいいですね。

しかし、その後の文章は、見逃せない点があります。

厳しいことを言うようですが、質問文に「心ないクラブのメンバーたち」、「どうすればバレずに」と、書いてありますが、この認識は、ぜひとも改めていただきたいところです。

まず、PePPerさんの「過去」ですが、これは当時のクランリーダー、クランメンバーたちへの「負い目」だと認識していますか? 理由はどうあれ、仲間との人間関係を何も言わずに放り出したのはPePPerさんですから、まずは、当時のクランリーダー、そしてメンバーたちへ「なぜ、自分が脱退したのか」を伝えるべきでしょう。もちろん、そこに謝罪の意を込めるかどうかはPePPerさん次第です。

次に、PePPerさんは現在所属しているグループのメンバーの一員に対して、「心ない」と言っていますね。もし、PePPerさんが正直にいままでの経緯を現在のメンバーに相談していた上で、それをおもしろ半分に広めようとしているのであれば、現在のメンバーに問題があります。ですが、そうでない可能性があることも考慮してください。自分の意にそぐわないことをやる人たちがすなわち「心ないメンバーたち」とは思わないようにしましょう。

そして「どうすればバレずに」とありますが、この発想はあまり感心できません。「今回の一件をただやりすごせばOK」というスタイルでは、カウンターストライクに限らず、PePPerさんはまた同じようなことを繰り返すことになるでしょう。自らの行動から端を発した問題であることは事実なのですから、そこは自分でなんとかケリをつけたいところです。今のグループのメンバーやリーダー、前のクランメンバーに相談してみるのもいいですね。真摯な気持ちで相談すれば、きっと相手も理解を示してくれるはずです。

コミュニティベースのクランリーダー、クランメンバーは「戻りやすい環境」を作ることも大事です

今回のようなケースはまれとはいえ、長い間クランを運営していると、クランメンバーが突然いなくなってしまう、ということはよくあるのではないでしょうか。引っ越しや就職、卒業といった環境の変化や、人間同士のトラブルなど、様々な事情がありますが、そういった何らかの原因でクランから離れざるをえなくなった人たちが気軽に戻ってこられるような環境を構築しておくのもいいですね。

そのためには、クランリーダーをはじめ、メンバー同士が気軽にコミュニケーションを図れる場所(オンライン、オフライン問わず)を用意しておくといいでしょう。ストイックに強さを追い求めるクランであれば、気軽に出たり入ったりされるのは困りものですが、コミュニティベースのクランの場合は、そういった気軽さも大事なのでは。
クランを通して、人間関係を作り上げていくのもまた、オンラインゲームの楽しさです。皆さんも、ステキな人間関係を作り上げていってください。

松井悠(まつい・ゆう)

株式会社グルーブシンク代表取締役。某対戦格闘ゲーム日本一になった後、ゲームイベントやクラブイベントの運営を多数行い、現在は世界最大のe-sportsイベントWorld Cyber Gamesや、International E-sports Festivalの日本プロデューサーを務める。日本におけるe-sportsの可能性を模索するため、IGDA日本デジタルゲーム競技研究会を発足した。なお、自身も2003年より、オンラインゲームクラン「teamStrayDogs」を立ち上げ、現在も様々なゲームで活動を行っている。

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■野良犬雑記
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