川崎市で男子中学生(13)が殺害された事件で、殺人の非行内容で家裁送致された18歳の少年は「誰かに止めて欲しいと思った」と供述していたという。少年時代、非行に走ったことのある人たちも当時、心の中で助けを求めていた。

 「強がっていても本当はもっと気にかけてもらいたかった。(ドラマの)『GTO』のように家庭にもがつがつ踏み込んで、マンツーマンで向き合ってくれる先生がいれば、と憧れた」

 かつて川崎市で非行グループを率いた男性(30)は、そう話す。

 年上のメンバーの命令通り、万引きや恐喝で手に入れた金を納め、薬物にも手を染めた。逮捕や少年鑑別所の入所経験もある。命令に逆らって暴力を受けないように「共存」の道を選んだ、と男性は言う。「不良をやりたかったわけじゃない。いじめられず生きるには(非行集団の中で)『共存』するしかなかった」

 進学や就職する友人を見て焦りや、うらやましさを覚えた。18歳で暴力団に誘われ、川崎市から逃げた。不良仲間とも連絡を絶った。犯罪と無関係になるには7年ほどかかった。

 中学1年から飲酒をしていても、周りの教師も大人も、止めてくれなかった。会社員となり、子どももできた今、川崎の事件について、「悪循環が何十年も続いてしまっている。教育委員会は、もっと子ども個人を見た方がいいのでは」と感じている。