みなし仮設:「なぜ自力でここまでやらなくては…」

毎日新聞 2015年04月04日 07時31分(最終更新 04月04日 09時47分)

福島県郡山市から自主避難している男性が示した原発ADRの和解案書。避難費用として住居費が認められている=山形県内で2015年3月27日午後7時31分、町田徳丈撮影
福島県郡山市から自主避難している男性が示した原発ADRの和解案書。避難費用として住居費が認められている=山形県内で2015年3月27日午後7時31分、町田徳丈撮影

 東京電力福島第1原発事故の避難者に無償で提供される「みなし仮設住宅」を巡り、東電と経済産業省が自主避難者分の家賃負担に難色を示し、それ以外の分も含めていまだ東電側に一切求償(請求)されていないことが明らかになった。一方、自主避難者の中にはこうしたみなし仮設に入居できず、家を探して自分で家賃を負担している人もいる。関係者は「国や東電は自主避難者の困難な実態に向き合ってほしい」と訴えている。【町田徳丈、日野行介】

 福島県いわき市から自主避難している女性(41)は事故直後の2011年4月、埼玉県内の一軒家を借りた。埼玉県がみなし仮設のマンションや公営住宅の入居者を募集していることを後で知ったが、娘2人と一緒に住むには一軒家の方が良いと考えて応募せず、夫が住むいわき市内の自宅のローン12万円と避難先の家賃13万5000円を毎月支払い続けた。

 女性は東電への直接請求で、国の原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)が示した計168万円(両親は各12万円、子供2人は各72万円)の賠償を受けたが、家賃分には到底足りない。14年1月、家賃約445万円(11年4月〜13年12月分)などを国の原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介手続き(原発ADR)で請求。約7カ月後、11年分の家賃約120万円を事故の損害と認めて約150万円を追加で支払うよう求める和解案が示され、東電も受諾した。

 それでも女性は「11年分しか認められず、理不尽だ」と憤る。

 福島県郡山市の会社員男性(43)は事故直後、山形県内の実家に妻と乳幼児2人を抱えて自主避難した。その後、仕事のため自分だけ郡山に戻ったが、12年5月に山形県米沢市で職場を得て、家族と一緒に暮らせるようになった。同市内ではみなし仮設の民間賃貸住宅の募集は終わっており、仕方なく同市内のアパートに入り、自費で1カ月計6万7000円の家賃・共益費を支払うようになった。

 しかし、郡山の自宅は1カ月約7万円の住宅ローンが残っており、二重の負担に耐えられず、同年9月下旬にみなし仮設扱いでまだ入居可能だった米沢市内の雇用促進住宅に入った。ところが事故前は老朽化で閉鎖していた建物だったためハウスダストがひどく、家族の健康を考えて13年2月に再び同市内にアパートを借りた。

最新写真特集