米欧など6カ国とイランが、同国の核開発を制限する枠組みで合意した。イランが核爆弾の製造につながるウラン濃縮活動を大幅に縮小し、米欧はイランに対する経済制裁を凍結・解除する。
世界の安定にとって重要な前進である。中東は今、混迷の度を深めている。様々な場所で生じた混乱が国境を越えて広がる。混迷をどこからときほぐせば良いのか。イランと国際社会の和解が糸口となるはずだ。
そのためにイランは核兵器開発への疑念を完全にぬぐいさらねばならない。6月末を期限とする最終合意に確実につなげてほしい。
米政府が公表した合意内容によれば、イランはウラン濃縮に使う遠心分離機を3分の1に減らし、濃縮活動を10年以上制限する。中西部にある重水炉は兵器用のプルトニウムができないように設計を変える。
米欧はイランの合意履行を確認したうえで、独自の経済制裁を凍結する。国連安全保障理事会の決議に基づく制裁も解除する。
オバマ米大統領は合意を「歴史的」と述べた。イランの核開発疑惑は2002年の発覚以来、中東の緊張を高める火種となってきた。これに歯止めがかかる意義は大きい。粘り強く交渉を続けた双方の努力を評価したい。
ただし、難しいのは詳細を決めるこれからだ。濃縮済みのウランの扱いをどうするのか。制裁をいつ、どのような手順で解除するのか。交渉の決裂回避を優先するあまり、対立点を先送りした。
米国内では議会多数派の共和党が交渉に批判を強めている。イランでは最高指導者ハメネイ師が強い権限を握る。保守強硬派の力も強い。それぞれ国内に抵抗勢力を抱えながら、最終合意にこぎつけるのは簡単ではない。
それでもあきらめてはならない。シリアやイラク、イエメンなどに影響力を持つイランと連携できれば、これらの国々の混乱収拾に道が開ける。イスラム過激派へも効果的に対処できるだろう。