もともとインターネットでは著作権に関する問題が頻発していましたが、近年ではキュレーションサイトのように、情報を収集し、それに新たな価値を付与して公開するメディアが盛んになってきたことで、さらに著作権に関する関心が強くなってきました。
何度も言われていることではありますが、改めて著作権というものに配慮したメディア作りについて考えてみる必要があるでしょう。そこで今回は、適切な“引用”の仕方を参照した上で“転載”などとはどう違うのかを見ていきましょう。
引用の際の注意点
引用は、「紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録すること」です。権利者の許可を必要としない代わりに、かなり厳重なルールが設けられています。文化庁の「引用における注意事項」の記載を見てみましょう。
(1)他人の著作物を引用する必然性があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)出所の明示がなされていること。(第48条)
正直なところ、上のルールでも現状のブログやサイトでは守られているとは言い難い状況です。特に、引用した著作物の割合が自分の記事の大多数を占めており、自分の書いた文章がほとんどない記事を書かれる方がかなりいらっしゃいます。それは転載であり、著作者の許可を得なければなりません。
他にも、出所の“明示”に関しては「出所を書いてさえいればそれでいい」と思っている方が少なからずいらっしゃいます。
たとえば、ネットで引用の出所を示す際には、論文や書籍ほどは厳密にせず、記事のタイトルとURLを明記するのが一般的なようです。私もこのパターンを使っていますし、たいがいの場合はこれで問題になることは無いと思います(後はマナーとして一応リンクを発しています)。
ただし、「URLなどは確かに記載してあっても、あまりにも小さくパッと見で分からないように記載してあり、しかも文末の見づらい位置に配置してある」ということもたびたびあります。
出所を示しても、その出所の示し方が“明示”でなければ違法になる可能性もあります。さらに、一部読者の反感を買ってしまう可能性もあります。その点には注意した方がいいでしょう。
引用の際に気を付けるべきこと
また、上述したルールを守っているからといって好き勝手に引用していいというわけでもありません。引用の際には他にもルールがあります。日本医書出版会の記述が分かりやすいので、見てみましょう。
5.原則として、原形を保持して掲載すること。
著作者には同一性保持権がありますので、同一性つまり原形を保持することが必要です。
6.原著者の名誉や声望を害したり、原著者の意図に反した使用をしないこと。
原著者が既に訂正・補足した著作物があるにもかかわらず、訂正前のまま引用したり、あるいは引用して批評すると、原著者の名誉や声望を害した利用となる可能性があります。
同一性保持の視点
時々、記事を要約して、あるいは内容を微妙に改変して転載する方がいらっしゃいますが、それは“引用”ではなくパクリです。これを守っていない方はかなり多いです。以前見たコメントで最もひどいと思ったのは「元の記事を分かりやすく要約してあげているのだからいいだろう」というコメントです。著作権者に利益さえあれば何をやっても良いということはありません。
名誉棄損の可能性
“引用による批判が許されている”ということは、元の批判者を好き勝手に非難していいということにはなりません。「〇〇は間違っている。なぜなら~」「〇〇は面白くなかった」程度なら批判の範疇かもしれませんが、「〇〇は買わない方が良い」「〇〇を作ったクリエイターは馬鹿に違いない」といった営業妨害や非難が許されるわけではありません。
上の2点については守られていないことが多いので、これらの点には気をつけた方が良いです。特に、レビューサイトを運営する方は「どこまでがレビューとして認められるのか」という点について考え、基準を設けた方がいいでしょう。
ここでは、主に文章についてお話しましたが、動画、画像、図表なども同じルールが適用されます。他人の図表を引用したら必ず出所を明示する、勝手に手を加えないなどのルールは守りましょう。ルール以前に人としてのマナーの問題でもあります。
アフィリエイト収益を報告するときに
これと関連して、アフィリエイトの収益を報告する際に、自分が利用しているASPの収益画面をキャプチャーしてコピペする人がいます。これも問題です。「自分の収益画面なのだから構わない」ということはありません。すべての権利はASP側に帰属します。
加えて、たいていのASPは守秘義務として管理画面を公開することを禁じています。全てのASPを確認したわけではありませんが、私が知るASPの規約では全てに書いてあったので、しっかりご自分の利用されているASPの規約を確認してください。“守秘義務”の欄を確認すれば記載があるはずです。
収益などを公開する際は、あくまで自分の作成した図表を用いるか、数値だけを公開するようにしましょう。