子宮頸がん:ワクチンの健康被害 国の救済ストップ

毎日新聞 2015年04月03日 07時30分

子宮頸がんワクチンによる健康被害の救済の現状
子宮頸がんワクチンによる健康被害の救済の現状
右足の補助装具とつえがなければ歩けない。1人で動けるのは、家の周囲の散歩程度だ=埼玉県ふじみ野市で2015年3月27日、清水健二撮影
右足の補助装具とつえがなければ歩けない。1人で動けるのは、家の周囲の散歩程度だ=埼玉県ふじみ野市で2015年3月27日、清水健二撮影

 医師で弁護士の大磯義一郎・浜松医科大教授(医療法学)は「副作用の診断基準がはっきりしない中での判断は難しい面もあるが、健康被害を幅広く補償するのが救済制度の趣旨で、因果関係は厳密な証明ができなくても認めるべきだ。緊急支援として自治体が患者の実費負担分を支給するのは意義がある」と話す。【清水健二、円谷美晶】

 ◇翌日に失神…まひ続く20歳 母「何とか自立できるまでには」

 「どうすれば治るか分からないのがつらい。娘の人生はこれから。何とか自立できるまで回復してほしい」

 埼玉県ふじみ野市に住む女性(20)の母(55)は、娘の体調が改善しないことに不安を募らせる。女性は2011年3月、2回目の子宮頸がんワクチンを接種した翌日に失神して以降、右手足のまひ、記憶障害、視野の欠損などの症状に苦しんできた。生理も1年半前から止まったままだ。

 20カ所以上の医療機関を受診し、支払った医療費や交通費は230万円を超える。副作用を疑うようになったのは症状が出てだいぶ後だったが、「ワクチンのせいだと思い込むから悪くなる」と、冷笑する医師もいた。

 13年8月、PMDAに被害救済を申請したが、その後は問い合わせても「審査中」の一点張り。PMDAは救済業務の迅速化を経営目標に掲げ、13年度は子宮頸がんワクチン以外も含めた全体の85%の審査を申請から8カ月以内に終えたとしているが、同じ症状で連絡を取り合う母親間で決定が出たという話は聞かない。

 女性は今春、大学の福祉系学部に進学した。大学のサポートはあるが、家族の送迎と車椅子は欠かせない。「原因がはっきりしなくても、実際に苦しんでいる患者がいる以上、国は治療の支援をしてほしい」と母は訴える。【清水健二】

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