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 政府による特定秘密の指定や解除の運用をチェックするために設置された、衆参両院の「情報監視審査会」がきのう、初会合を開いた。

 ようやく、である。

 本来、昨年12月の特定秘密保護法の施行にあわせて始動するのが筋だった。しかし昨年11月に安倍首相が衆院を解散したため協議が中断。越年しても委員を選任できない状態が続き、施行から4カ月近く経った。

 「国民を代表して監視するという、審査会の果たすべき役割は極めて重要なものがある」。衆院の審査会で、会長に選ばれた自民党の額賀福志郎議員はこうあいさつした。だが「監視」の名にふさわしい機能を発揮できるかは、やはり疑問だ。

 審査会は政府から毎年、秘密の指定や解除の状況に関する報告を受ける。政府に特定秘密の提出を要求し、運用に問題がある場合は改善を勧告できる。ただし、秘密の提出を求めても、政府は、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼす恐れがあると判断すれば拒否できる。運用改善の勧告にも強制力はない。

 問題は、「何が秘密にあたるかは秘密」という、秘密法それ自体にある。野党側は、国会への情報提供を義務づけるよう求めたが、与党側は「三権分立の観点から、行政権を侵してはならない」と受け入れなかった。ならば何のために国会に監視機関を置くのか。三権分立の観点から国会がやるべきことを、よくよく考えてもらいたい。

 先月の衆院議院運営委員会で、民主党の後藤祐一議員が、「(昨年末に指定された)382件の特定秘密情報と、その中のおそらく47万件にわたる文書等」の題名すら提示しない場合があるのかとただしたところ、政府側は「精査中」と繰り返した。可能な限り具体的な形での提出を、審査会として強く要求し、政府は応じるべきだ。

 実際の運営も不透明な点が多い。例えば、衆参各8人の委員の3分の1以上の要求があれば会長は審査会を開かねばならないと規定されている件。衆院では2人しかいない野党委員が開会を求めても、3分の1に満たないとして却下されるのか。

 結局は審査会、とりわけ与党委員が「国民の代表として監視する」という責任をどれだけ自覚して動くかにかかっていると言える。積極的に秘密の提出要求をする。改善勧告を行う。そのような実績を積み重ねることによって存在感を示し、政府に緊張感を持たせる――。最低限の役割はせめて、果たしてもらわなければならない。