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TEDカンファレンス リポート - vol.3 -



みなさま、こんにちは!プレ子です。
今回は、カンファレンスの会場をご紹介します!

Theater

スピーカーたちの熱の入ったプレゼンが行われるのは、「シアター」と呼ばれるメイン会場です。バンクーバー・コンベンション・センター、大ホールの中にあります。設計を手がけたのはブロードウェイのショーやアカデミー賞授賞式のセットデザインでも知られる、建築家デビッド・ロックウェル氏。“pop-up theater”と呼ばれるこのシアターは、昨年、TEDの30周年を記念して作られました。わずか数日間での組み立てと解体が可能で、今年はいくつかの“mini-makeover(修正)”を加えての、2回目の登場となりました。開催地であるバンクーバーからさほど遠くない北米東海岸の木材(Douglas fir)を使い、最低でも10回は繰り返し使えるという、環境にも配慮した設計になっているんだそうです。

Photo: James Duncan Davidson

何よりもの特徴は、その美しさ。まず目に飛び込んでくるのが、幻想的な明かりに照らし出された木のストラクチャー。足場のように組まれた木の建築が塗装もされず、そのままの姿を露わにしています。これは「シアターの裏の部分も見てもらいたい」というロックウェル氏の意図によるものだそうで、昨年のカンファレンス参加者からの好評を受け、2回目になる今年は、照明の当て方により力を入れたとか。

私、プレ子も初めて大ホールに入った時、どちらかというと無機質な素材が使われ、近代的な雰囲気のコンベンション・センターの中に、突如として現れるこの巨大な木の構造物に「えっ何だ、こりゃ?」と一瞬脳みそがびっくりするのを感じました。しかし、そのすぐ後にやってきたのは、ちょっとした感動。木のぬくもりとかすかな香りに包まれて、初めての生TEDに緊張していた心が、すこしほどけたような気がしました。

Photo: Ryan Lash

足場のような木の階段を上りきったところにあるのは、シアターの外縁にあたる場所で最も高さのあるエリア。会場全体が見渡せます。
sense of intimacy(親密感)をキーワードに、シアター内には、参加者が一期一会のTED体験をじっくり心の奥深くまで味わえるようにと、様々な工夫が施されていました。キャンプファイヤーのような環境を作り出すというコンセプトのもと、スピーカーの立つ半径およそ5メートルの円形の舞台を中心に扇型にアレンジされた客席は、プレゼンをするスピーカーだけではなく、その空間を共有する他の参加者の感動や発見の気配も同時に感じることができるようになっています。
さらに、座席の種類も実に多様。普通の一人掛けの椅子から、一人から数人でくつろげる色・形の異なるソファー、PCの使えるエリアに置かれたハイスツールなど、何種類もの腰かけが用意されていました。参加者はその日の気分によって、好みの場所や椅子を選ぶことができるようになっているわけです。いろんな席を自由に試せることで、堅苦しくなくリラックスして毎回のセッションを楽しむことができました。
(プレ子が期間中いろいろな席を試した中での一番のおすすめは、大きめのソファー。柔らかくて長時間座っていても疲れない♪)

Photo: Bret Hartman

体験コーナー

シアターの外にもSocial Spaces と呼ばれるエリアがあり、参加者を楽しませるユニークな展示やイベントスペースが設けられていました。価値あるアイデアを広めることに関心ある協賛企業が、観客に新たなアイデアの種を提供したり、発想を深めることができるよう、クリエイティブな空間を用意しているのです。観客は休憩時間にも知的刺激を受け続けることができるというわけです。

プレ子が個人的に面白いと思ったのは「Design Your Truth」という名のブース。簡単なテストで人間が自分の性格を一体どのくらい正確に知っているかがわかるというのです。

Photo: Ryan Lash

まず、タッチパネルを使って性格にまつわる次の8項目について自己評価をします。courageous(勇敢であるか)、compassionate(慈悲深いか)、fearless(恐れ知らずか)、audacious(大胆か)、caring(優しいか)、sensitive(感受性豊かか)、independent(独立心旺盛か)、determined(意志が強いか)。
次に、計測器を装着した上で、1分ほどの短い映像を見せられます。赤ちゃんや若いカップル、老夫婦など、次々変わる映像をただ眺めるだけ。映像を見ている間の体の化学反応(発汗量、どれだけ体が動いたか、体温)から“本当の”性格が診断されるというのですが……。

Photo: Ryan Lash

こちらが、診断結果。自己評価が青で、計測された“本当の”自分が赤で記されています。ちなみに、プレ子の場合は、自己評価よりも計測結果の方がすべての項目でポイントが高く、さらに自分で思っているよりは、courageousでaudaciousだという結果に!
ちょっと、これは嬉しいじゃないか~と一瞬、喜びかけたのですが、いや、ちょっと待てよ、そもそもすぐにGreat! Awesome!と褒めるアメリカ文化のことだから、ひょっとすると診断も甘くして、良い結果が出ているように見えているだけなんじゃないか?という考えまで浮かんできました。などなど、テストが終わった後にも、深く“真実”について考えさせてくれる、実に興味深い体験コンテンツでした。

ほかにも、興味深い展示やブースがたくさんありました。
以下、ほんの数例ですがご紹介しますね。

・「The Art of Listening」は、今年のTEDプライズ受賞者である デビッド・アイセイ氏とStoryCorpsのブース。アイセイ氏が集めてきた名もなき人々の物語の中から、好きなものを選ぶ。物語を聞いている間、右手をセンサーの上にかざしておくと、物語を聞いている間の自分の心の動きがビジュアルイメージとして映し出されるというもの。

Photo: Ryan Lash

・「Design Your Dare」は、アメリカの大型量販店によるカフェ。コーヒーを頼むと、前の客がdare(敢えて行いたいこと)を書いたカップホルダーがついてくる。私のホルダーには「見知らぬ人5人にハグしなさい」と記載あり(汗)。自分もdareをノートに書き込むと、それが次の客のカップホルダーにプリントされる。

Photo: Ryan Lash

・デビッド・イーグルマン氏がプレゼンで紹介した機器、Versatile Extra-Sensory Transducerを実際に装着してその感覚を試すことができる。タブレットなどの内臓マイクで検知した外部の音を、ベストに取り付けられた変換機に無線で送信。変換機が音声を振動に変えるため、皮膚を通して音声言語を体感できるという仕組み。ただし、信号を受けた人間側の学習が必要で、ひとつの単語の振動パターンを識別できるようになるには1時間くらいかかるとのこと。

Photo: Ryan Lash

・「The Art of Stillness」は、「スーパープレゼンテーション」でも過去にご紹介した作家、ピコ・アイヤー氏と、航空会社とのコラボでできた体験スペース。振ると光る白いピンポン玉のようなボールを持たされ、未来的な白いブースの中に入る。ボールを椅子の前のホルダーにセットし、椅子に座り一分間ほど光と音の空間で過ごす。するとcalmest(自分の心が最も穏やか)な時の心拍のリズムがボールにコピーされそのテンポで白く光るようになる。日常に戻っても時折、そのボールを眺めることで自分のcalmestなリズムを思い出せるというもの。

Photo: Ryan Lash

・「Suiting Up for Ebola」のモックアップでは、過酷な環境下で、エボラ出血熱治療中の感染を防ぐために、医療従事者たちがどれだけ大変な注意を払う必要があるかを疑似体験できる。防護服を着用したり、消毒作業を何度も行ったり、というシミュレーションに参加。実際にアフリカで治療にあたったボランティアの医師たちの貴重な経験も聞ける。

TEDプレゼンテーションリポート

【元ホワイトハウス実習生、モニカ・ルインスキー登場!】

1998年、クリントン大統領(当時)との不倫スキャンダルで世界中の注目を集めたモニカ・ルインスキーがTEDの舞台に登場しました。15年以上の沈黙を破り、何を語るのか?彼女の言葉に注目が集まりました。

大統領との不倫が発覚した当時、モニカは22歳。連日、大勢の報道陣に追いかけまわされ、私生活を奪われた様子を振り返りました。当時、彼女を更に傷つけたのは、普及し始めたばかりのインターネットです。あらゆる個人情報がネットにばらまかれ、彼女の人格は一瞬にして打ち砕かれました。自分は、ネットの風評被害によって人格を奪われた「被害者第1号 (Patient Zero)」だったと語り、自ら命を絶とうと思った日もあったと告白しました。

しかし、なぜ今になって、公の場に姿を現すことを決意したのか?そのきっかけとなったのは、2010年に米ラトガース大学で起きた事件だったと言います。当日18歳だった男子学生タイラー・クレメンティさんは、恋人の男性とキスしているところをルームメートに隠し撮りされ、その様子がネットで生中継されました。その3日後、タイラーさんは橋から飛び降り、自殺しました。

このニュースを知ったモニカは、ネットいじめを撲滅するために立ち上がることを決意します。他人への嫌がらせや恥ずかしめ、いじめを目的とする投稿が人々の注目を集め、それがアクセス数、ひいては多額の広告収入に繋がる。そんな「屈辱の文化 (culture of humiliation)」を今すぐ改めなければならないと力強く訴えました。

「ネットの世界に足りないのは思いやり (compassion)と共感 (empathy)です。もし今、ネットいじめに悩んでいる人がいたら、これだけは知って欲しい。自分自身への思いやりだけは決して忘れないでください。大丈夫、きっと乗り越えられるから。」

積年の思いがこめられたモニカの言葉に、会場から温かいスタンディング・オベーションが送られました。
TEDプレゼンテーションはこちらから

Photo: James Duncan Davidson

【“ラジオ”の素晴らしさを再発見!】

最先端技術に関する情報の発信源となっているTEDカンファレンスで、今年、参加者たちの注目を集めたのが「ラジオ」です。一昔前のメディアだと思って侮るなかれ。今、ラジオがとっても面白いことになっているんです。

木曜日に登場したローマン・マーズは、人気ラジオ番組「99% Invisible」の制作者兼ナビゲーター。番組のテーマはずばり「デザイン」です。日用品から公共の建物、宇宙服に至るまで、あらゆるもののデザインに隠された裏話を徹底取材し、ミニリポートの形式で紹介しています。

TEDの舞台では、机にマイクを据えたラジオブースを再現し、「旗のデザイン」に関するトークを披露してくれました。ローマンによれば、専門家の間では以下の条件を満たすものが「美しい旗」とされているそうです。

(1) シンプルである。
(2) 記号が使われている。
(3) 2~3種類の原色が用いられている。
(4) 文字や紋章はなし。
(5) 目立つ。

しかし周りを見回すと、世の中はこれらの条件から逸脱した旗で溢れています。「特にアメリカの“市の旗”は最悪だ!」と声を荒げるローマン。おかしな旗を言葉巧みに描写する様は、ラジオ・ナビゲーターの真骨頂です。彼の軽妙な話術によって、会場は爆笑の渦に包まれました。

ちなみに、リポートVol. 2でご紹介したTEDプライズ受賞者のデイブ・アイセイ氏も、もともとはラジオ番組の制作ディレクターです。音声が描き出す世界、そこから膨らむイメージの豊かさに気づかせてくれたTEDカンファレンスでした。

Photo: Bret Hartman

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