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【社説】

ナイジェリア ボコ・ハラム対策全力で

 ナイジェリア大統領選で野党候補が勝利した。民政に移管して十六年で、初めて政権交代が実現する。治安と経済、さらに民主化に、アフリカ最大の国がどう取り組むか。成果を期待したい。

 大統領選では野党候補で元最高軍事評議会議長(国家元首)のブハリ氏が接戦の末、現職ジョナサン氏を破った。

 緊急の課題は北東部を拠点とするイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」対策だ。公共施設や市場、集落への襲撃を繰り返し、自爆テロまで行う。昨年四月には学校を襲い二百人以上の女子生徒を拉致したが、未解決のまま。周辺国にも勢力を伸ばし、過激派組織「イスラム国」(IS)との連携も掲げる。

 政府軍はチャド、ニジェールなど周辺国の軍隊の支援を得て、辛うじてボコ・ハラムの拡張を防いでいる。一方で政府系企業に巨額の使途不明金が出るなど、現政権には深刻な汚職の構造がある。大統領選で国民は軍人出身のブハリ氏の強い指導力に、治安回復と腐敗した行政の改革を託したと言えよう。

 油田地帯があり豊かな南部はキリスト教徒が多く、貧しい北部はイスラム教徒が多数を占める。北部出身でイスラム教徒のブハリ氏が異なる民族や宗教間の対立を抑え、均衡を保てるか、難しいかじ取りを迫られる。

 ナイジェリアは人口約一億七千万。豊富な石油資源に支えられ経済規模もアフリカで最も大きい。現政権は外資企業を誘致し、製造業の育成にも取り組んだ。しかし、全人口の六割は一日一ドル未満で暮らす貧困層が占める。さらに、昨年からの原油価格下落で経済は一気に失速した。

 ボコ・ハラムが勢力を伸ばす背景には、深刻な格差と若年層の高い失業率がある。新政権は雇用創出に力を入れ、原油輸出で得た利益を北部に配分するなど、格差是正に取り組まなくてはならない。

 ブハリ氏は一九八三年、軍事クーデターに加わり、その後軍政トップとして反体制派や政権を批判するメディアを弾圧した。選挙では「過去は変えられないが、今の私は民主主義者だ」と新しい指導者像をアピールした。

 五月下旬に予定される政権移譲、さらに新政権の運営まで平和裏に進むのか。今後、民主化はどこまで根付くか−。ナイジェリアの歩みはアフリカの開発途上国にも影響を及ぼすはずだ。国際社会も注視している。

 

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