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【社説】

新しい食品表示 消費者はもっと賢く

 食品が体にどういいのか、国の事前審査なしに表示できる「機能性表示食品」制度がスタートした。届け出るだけですむため、不確かな根拠で効果を表示していないか、消費者の側も見る目が試される。

 「○○を含み、お腹(なか)を整える効果があることが報告されています」。新たな制度で販売される商品はこのように表示され、今夏から店頭に並びそうだ。

 注意したいのは、商品はあくまで健康の増進や維持が目的で、病気の治療や予防効果を暗示するなど、消費者に誤解を与える表現は使えないことだ。

 新制度は安倍政権の成長戦略の一環だ。健康食品市場は年間売り上げが二兆円ともいわれる。農産物の海外展開も視野に入れて消費者に分かりやすい機能表示制度を設けたいと、米国の例を参考にした。一九九〇年代に同様の緩和を行った同国では、サプリメントや健康食品市場が拡大した。

 国内の食品表示制度には、先行する「特定保健用食品(トクホ)」があるが、国の審査に時間がかかる。開発費も負担が重く、中小企業には手が届かないともいわれてきた。「栄養機能食品」も表示できる成分が限られている。

 これに対し、新設された「機能性表示食品」は、表示の科学的根拠を示す臨床研究結果や論文を、販売の六十日前までに消費者庁に届け出るだけでいい。アルコール類を除き全食品が対象で、トクホでは許可を得るのが難しかった生鮮食品まで活用できる。

 アピール力を高めたいと意気込む事業者は少なくない。

 JAみっかび(浜松市)は特産の「温州ミカン」に「骨の健康が気になる方に」との表示を検討中だ。色素成分の含有量が他品種に比べて多く、「温州ミカンをよく食べる女性は骨粗しょう症になりにくい」との研究結果を得ている。茶葉「べにふうき」を扱うJAかごしま茶業(鹿児島市)は日射量の多さから抗アレルギー作用がある「メチル化カテキン」が豊富なため、「目や鼻の調子を整える」との表示を検討している。

 一方、国の審査がいらない分、根拠をごまかして効果をうたった商品が出回る可能性も残されている。商品リスクを消費者が負う不安に対し、企業や国はどうこたえるのか。

 事業者には健康被害情報を集め、消費者庁に届け出るよう義務づけられたが、行政の監視は欠かせない。食の安全を何よりも優先し、消費者を裏切るような制度であってはならない。

 

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